第5章 "好き"が止まらない!
ガシャァ…ン、とここまで聞こえる破壊音。窓辺から遠ざかる炎。
アイマスク越しに見えるのはハルカはまだ戦っているって分かる。ムチのようにしなる呪力、呪術。
……へえ、随分と反転術式を上手く扱っているみたいだ。たくさん考える時間があったんだろう、僕と手合わせした時よりも形状を変えて戦っている。髪といっても呪力の籠もった遺族の遺髪、それらで確実に呪霊を追い詰めている。
きっと廊下の方で戦ってるんだろう、僅かに見える校舎内のオレンジ。
「みたらい、苦戦してんなー…」
「呪霊戦は初めてだもんねー、けど彼女には自己回復があるからねー!……まあ…この調子ならなんとかなるよ」
延焼しない炎の明るさが上がる教室。それは燃えたり、消えたりを繰り返して点滅してる。
やがてその炎に焼かれた大きな人型の呪霊が見えてきた。あいつは校舎からグラウンドに逃げようとして居るのがこっちからでも確認出来るな。
釘崎が、あ!と声を上げて指差した。
「あ、教室のアレ逃げようとしてない?」
「けど、みたらいも追ってるな」
「まー傍観してなさい、クラスメイトの呪術をさ!」
野薔薇がゴチ、と鈍い音を立てて背後からの呪いを祓い、校舎を見上げた。
カシャア…ン
耳をつんざくような、ガラスを破壊する音。
呪霊が二階から飛び降りるのを見て、追いかけたハルカが手を伸ばす。その手には無数の白い線…ここからそう見えるけれど、あれは反転術式の"怒髪天"だ。
しかしここから見てもかなり自身の式髪を使っている様に見える。染めてない方の前髪サイド、白っぽくない?彼女の呪力量が増えている。直接触れて相手の呪霊の呪力を吸い取ったにしろ、少し無理はしているような…。
教室のベランダから伸びる天の糸の様なその白。それは拡散されて形を変えていく。
怒髪天は術式開示をしたんだな、素早く網目を展開して呪霊の下半身に触れた。燃えながら切り刻まれる光景はサイコロステーキみたいだ。
これ、悠仁みたいにビフテキを所望してたら今日の歓迎会が………いや、そうはならないか。そんなグロくないし。