第40章 悔いのない人生を
『この世界は"無"だと言ってたけど。地面の下はどうなっているの?どこまでもこんな感じの土?』
爪先でザッザッ、と砂埃を上げて僅かにほじくった乾いた大地。
無の世界で地球上みたいな、何キロも大地が続くのか、と気になる…。
「昔、棺桶の蓋を割って地面をほじくった事があったけど……」
『我が母ながらすげえ事してんなあ……』
「……あまり厚くない土の層みたいな所にここは存在してるみたいだよ。下は真っ暗でどこまで続くのか分からなかったけれど…、」
ほじくった穴は棺桶の蓋をへし折って塞いで土を被せたらしい。証拠隠滅ってか……いや、周囲の一族にその行動は見られてるだろうけどさ?
死後の世界なんてなんでもありきなんだろうね。領域なんていろんな呪術師が持っているのだろうけれど、私達の居る領域はまるで地獄に逝く寸前でとどまった、小島みたいなものなんでしょう。
母はこの私達の立つ地面の下は空洞と言ったけれど。私の記憶の奥には書物で見た、地獄の構造が浮かんだ。
──どこまでも続く、死後の魂が堕ちていく世界……地獄で一番罪が重い者が行き着く先の世界…。
そんな世界がいくら伸びようとも、きっと堕ちるのは変わらない。時間が止まった世界にその刑はキツいかもしれないけれど。
私はこの世界に居る、私含む先祖たちの呪力を使って領域の維持力をどうにかする方法を考えた。
とある箇所を拡大し続け、呪力不足となった世界で他が維持出来なくなれば、ループするような四方に伸びる大地は維持不可になるんじゃないのかって。
根を張る枯れた大木も、壊れかけた墓石も何もかもが崩れた大地と共に落ちてしまえば、無に出来上がったこの魂や生者が留まることの出来る、この奇跡とも不幸とも言える場所はバラバラに砕け散る。
──きっと、最後の最後に堕ちるのはバトンを渡された私なんだろうなあ……。
その覚悟を決めて私は母にそれを話し、領域内の女達に"いい加減墓じまいをしよう"……と、時間を掛けて母と共に説得する事にした。
この悪習の終わりには皆の協力が必要なのだから……。
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