第40章 悔いのない人生を
「見ての通り、春日を統べる権利は死んだ時点であんたに譲渡済みさね。
で、来て早々に本題だけど。この領域をなんとか消滅まで行くとしたら、ここに持ち込まれた呪力をなにか別のものの為に使って減らすのが良いんじゃないかな?」
持ち込まれた呪力…とは。
なんじゃそれ、と私は腕を組み、目の前の母のように片足に重心を掛けながら『何それ?』と返した。
だって領域については知らない事ばかりだもん。数年だけど私が今持ってる権利を持っていたのは母、リョウコであって知識は母の方が豊富なはず。
私の言葉を聞いた母。視線があちこちに動いた後に、領域内に散らばる白装束の女達に顔を向けてる。
「ハルカが前に来た時と、今で感じる違和感って無いかな?」
『違和感ねぇー……何か、変だなーって思うんだけど……誰か追放でもした?』
以前と比べると数十人居るのは違いないけれど少しばかり密度がスカスカしてるような気がして。それじゃなかったら何が物足りないんだろ、と次の違和感探しを心の内で考えていれば母は「ピンポーン!」とテンション高く言う。
……ああ、そうだった。私の母は生前からこうも元気な人だから、ずっと元気な彼の側に居た私は夫……悟にそれを重ねちゃってた。出張だとかで会えず、しばらくこうも話さないとそれすらも忘れかけてたわ……。
母は私に視線を向けて人差し指を立てて見せる。
「あのね、この世界には資源もないから無から何かを生み出せないの。だから呪力を使って何かを生み出すのよ。
死んでしまったら生命活動も無いし、取り込む行為の為のモノも取り込んだ後の排出されるモノもない。そんなんじゃここでは時間なんて無いようなもので例え種を蒔いたとしても一生芽も出てこないでしょう。
空に浮かぶは落ちる事のない夕日、いつまでも夕方よ。
……そんなんじゃ、身体の中で呪力は生み出せないっしょ?」
『まあ、日常が送れなくて時間経過もほぼ無いとなると呪力は生み出せないよね……』
うんうん、と頷いてそんな私に母、リョウコはここでの分かった事についてを話していく。