第40章 悔いのない人生を
箸を止めて娘達をじっと見ていれば、双子の片割れである小春以外はしっかりと呪術師としてやっていける呪力量を持ってる。
ハルカの時代で春日の血族が変化してしまったのか、その母であるリョウコで変わってその子孫であるハルカからその変化が適用されたのか。
真実は不明だけれど既に夕陽の使う治療方は髪に溜め込んで溜め過ぎたらあの世行き!…というものではなくなってる。
確かに髪に呪力を貯める名残りはあるけれど……。
この子の場合は呪力に重要な脳と腹部……その脳に"記憶"として吸い込んだ"負"が蓄えられる。見えない形での呪力の蓄積だけどここから身代わりの一族は変わっていくんだ…。
ハルカがさ…、死んだ後も続く世界をどうこうしたいって願ってるのは知ってる。
……でも。
僕としては、この子達の誰でも良いから。僕を彼女に逢わせて欲しいなって……──。
笑いながらに学校生活についてを話してた子供が僕を見て不思議そうな顔をした。その子に釣られるように他の子達が小悟の顔を覗き込んでから僕を向く。
「父さん…?」
僕の食事の手は止まったまま。大好きな人との子供達、みんなの様子を見てて幸せな父親!……なはずなんだけど…。
まだ食事中の鎹が茶碗を置いて、かちゃ、と箸をその茶碗の上に置く。それで椅子から降りて僕の席に駆け寄ると手を伸ばして僕の髪をわしわしと撫でた。
まるでハルカみたいにさ、振る舞っちゃって…。
「……鎹?どうしたの、パパにいいこ~ってしちゃって」
ふっ、と笑って隣に立つ娘を見れば僕の頬に滑るように温かい何かが落ちていった。
気が付けば僕は泣いていて、凍ったように茶碗と箸を持った、動作が固まってる僕を鎹はしっかりと抱きしめる。
その背中に片腕を回すために、僕はあまり手を着けていない茶碗と箸を手早く置いて、小さなその背に手を回すと、懐かしいような…少しぎこちないような動きでまた撫で回して。
「パパ、また泣き虫さんになってるもん、ママだったらこうやって落ち着かせるよね」
子供は親を良く見ているもんだね~……、僕は、この子たちの成長がとても嬉しいよ。
悲しみだけじゃない、嬉し涙が後追いしてる。するすると流れていく涙。
「……うん、そうだね。パパ、寂しんぼだからやっぱりみんなの前じゃ泣いちゃうみたいねー……ははっ…は」