第5章 "好き"が止まらない!
ドキドキしながら私はバリケードに向かって反転術式、"怒髪天"を召喚する。両手首や手の各場所からするすると召喚された毛束が撚り合って地に着き、バリケードの天辺に伸ばす。
二本の架け橋、所々が混じり合い脚立となった。
どうせバリケードの中に入るのなら登れるモノが良いだろうし。
戦闘能力があまり優れていないのだと自覚していたから、小さな事でもコントロール出来るように、とはこつこつ積み重ねては居たのだけれど。結構丈夫そうだ、この召喚した物は限度は分からないけれどいくらでも伸びる。
「俺が触れば良いんです?」
伏黒が怒髪天を撚り合わせた脚立に触れる。特に痛がる訳でもない。火が吹き出る事も。そんな伏黒の様子を私は背後から覗き込む様に見て、周囲から布の擦れる音がするので後ろを見たら悟も虎杖も釘崎も同じ様に興味深そうに覗き込んでいた。
振り返った伏黒はにっ、と笑う。
「……触っても呪力が持っていかれる事も怪我を負うこともなく、俺が触れるのは特に問題なさそうですよ」
「そっか。じゃあ安心だ!じゃあ、僕らはグラウンドにまずは待機、侵入経路はそこの昇降口他にグラウンド側から見て正面入り口、好きな方で。
これが終わったら回らない寿司が待ってるよ?頑張ってねー!」
伏黒には影響が無い、と分かると悟はにぱっ!と笑う。じゃあこれで廃校に皆で入ってさっさと祓ってしまえばお寿司が待っているって事だな。
先に行く、と脚立を登っていく伏黒、続いて虎杖、そして釘崎に悟。
最後に私が怒髪天を操ってバリケードの中に入っていく。
私も最後に地に足を着け術式を解除した所、釘崎が"さて、"と片手を皆が集まる前に出す。もうバリケードの中、油断は出来ない(特に私なんだけれど)
バリケードの内側から中を見ればすぐそこに昇降口。左側は雑草でボーボーなグラウンドが見えて右側奥には体育館のようだ。
釘崎は昇降口を指差しながら私達に言う。
「纏まっていくよりかは分かれて行ったほうが良いでしょ」
「みたらいも居るしなぁ…」
お荷物というか見学というか。こういう場は初めてだ。
この状態であぶり出された呪いが既にこちらにじわじわと、遠くの含めて3体は見える。術師が5人も居るせいか、それとも私のせいか。
私はグラウンドの方向をちょいちょいと指差しながら3人に言った。