第40章 悔いのない人生を
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空がゆっくりと夜に移り変わっていく中で、私の隣で歩幅を合わせてくれている高専の制服を着た、息子の腕に腕を絡める。
……たまにさ、昔の極秘任務のカメラの呪物で、悟の過去に行った時の学生時代の悟を思い出すような容姿に変にドキッとする事もあるんだよね…それくらい長男は悟にそっくり。
過去の悟は私に出会ったのがあの時が初めてだった。その際に衝動的に私に襲いかかってた少しケダモノの面も見せたけれど、ブーブー文句と生意気言いながらも倒れた私を助けて介抱してくれた、あの頃から優しかった悟にそっくりなのは、あまり制服をカスタマイズしてないってのもあるのかも。
それが余計に高専時代の悟に容姿が似ていて、なのに中身が素直ちゃんで。
母、嬉しいです。
『……んっふふー!』
「…飲む前から酔ってない?母さん」
『いーえ、酔ってないですーう、けど気分的にノンアル状態で上げ底かも。
今日は夕陽がお家でご飯作りと片付けしてくれるっていうし、私のボディガードに息子が居るんで~?この状況、テンションも上がらずに居られまい?』
「なんで口調おかしいの?父さんの変なクセ移ってない?」
困ったような表情して本気で心配してそうな蒼空。
へっへー、ついこの前までハイハイしたりしてたちびっこが一丁前に見上げるくらいに身長(タッパ)もデカくなりやがってさ!
悟に良く似た姿だけれど、身長は並んだ時に彼よりは少し小さい。何センチ?と聞いた時、蒼空は185センチと言ってた。
悟は190センチって言ってたから成長期な息子に追いつかれる・追い越される可能性をまだ秘めてる……だって、この子は間違いなく五条悟の息子なんですし?そういう、育ち盛りな遺伝もするんじゃないのかな~。
息子に追い越されそうじゃん、と悟と息子を見比べてやれば、拗ねた悟が蒼空の頭をぐっ、と抑えつけて「僕を越しちゃ駄目だかんねっ!ぜーったい!」というのはきっと前フリ。さり気なく私も乳製品を息子に多めに出してたりして、いつかは父親を越すのを察してる。
『今日はへべれけになっていい?いいよね、いいともー!』
「はあ…、いい年なんだから周りの人に迷惑掛けないように大人しくして欲しいんだけど?」
『誰がいい年じゃ、勝手にいい年にすんな~?』
「四十も過ぎればとっくにいい年じゃん、ほら母さん。お店見えてきたよ」