第39章 七つの鎹
「や、やだあ~…今日が僕の誕生日だって事、すっかり忘れてた~!年かなあ~…アラフォーだからなのかなぁ~?とにかく皆、ありがとう!
おやおや?美味しそうなご馳走が並んでるね?どこのシェフ呼んだのかな?ミシュランガイドに載っちゃうんじゃないのかな~?リストランテ・ゴジョウの誕生か~?」
『ん?……この子とこの子だよ』
ご飯を手伝った子の頭に手を乗せて、『それから』と言葉を追加して。
『とっておきのあまーいのはこの子とこの子……それからこの子ね……味見担当!』
私がぽふっ、と小さな頭に手を乗せて見れば悟は一番小さな娘を見て笑顔を向けている。
「ワオ!それじゃあ絶対に美味しいやつじゃん!味の宝石箱だった?お目々がきらっきらしとるやないかーい!そっか!美味しかったかー!」
すたすたと早足で駆け寄った悟は鎹の髪がぐしゃぐしゃになるほどに撫で回して。私と視線が合った時に指先で招いてる。
主役にインパクトを与えたって事でひとつの目的を達してるから、時間も時間って事もあり皆がいつも通り食事が出来るようにと準備を開始してる。
冷蔵庫からお茶を取り出す子、早速椅子に座る食いしん坊や悟の服を掴んだまま他の子とお話してる子らの中で、悟は口元に添えるように片手を当ててる。内緒話か…、と耳を貸すとすぐ近くの子たちに聴こえない声量でぼそりと一言。
「ねえ……今夜八人目、作ろうよ。僕の誕生日プレゼントとしてさ?……いいでしょ?」
『……っ』
ぶわ、と頬に集まる熱。誰かに聴こえてたらまずい事を口走ったから、その耳打ちの姿を悟を睨む。私も声量を抑え、悟だけに聴こえるように……。
『……七人も居るんだよ?もうさ、充分じゃない?二桁とかもう…、』
「オマエからの誕生日プレゼントは八人目のチャンス権ねっ!……だから、今日は着けないでするからさあ…生でえっち、しよ?」
なんの内緒話?と興味を持つ前に悟も「僕もお腹減ったからさっさとママも席に座って!」と促されて。
さっさと席に座る主役と最後に席に座った私。夕陽に不安げな顔をされながら「顔が真っ赤だけど…風邪引いちゃった?」と心配をされつつも、家族の揃った中で悟の誕生日会が始まった。