第39章 七つの鎹
『悟……悟、私の話をちゃんと聞いて、』
「聞くもなにも、もしかしてその譲渡の為に女の子を求めてたのか、オマエ!?ハルカだけは…そういう、春日の汚ねえ所、受け継いでないと思ってたのに…!」
どうしてこうも勝手に決めてんだ、と強く布団を掴む僕の手に、触れた冷たく細い指が手の甲をそっと撫でる。
彼女の顔を見れずに俯く僕。視界の端に僕らの子供たちが少し縮こまってただ黙って立っている中で、頭上のハルカが僕へと優しく声を掛けた。
『悟、私達春日家の血を引く女達は死んでも成仏する事を赦されずに、領域内にずっとずっと閉じ込められるの。悟も知ってるでしょ?』
「知ってる…けど……、」
『悟とか、蒼空とか……私の大事な人たちが死んでも同じ場所にいけないんだ。生まれ変わってもまたこうして来世で出会ったり同じように恋したり、愛したり、家族になる事が赦されないのは…私は嫌だなあ……』
「そんなの……っ、」
……知ってるよ。何十人も居た領域内の女達。全てが生まれ変わりすら出来ず、禪院家を呪って自分達の血の果ての生者に力を与える為に魂と呪術であの空間に存在していた。末代ほどに力を増すというのは死者の数が増える程に領域内の仲間が増えているから……そうだろ?
一度死んだ事のあるハルカ。死んだ時、よく聞く川を渡りそうだとか渡ったとか、天国だとか地獄だとか……そんな場所ではなく実際に領域内に逝って居たっていうなら春日の血を継承する女の末路ってのは彼女の言う様に確実なんだ。
僕の手からキミの冷たい体温が離れ、俯く僕の頭を優しく撫でる。甘い時間のそれとは違う優しい撫で方だった…。