第39章 七つの鎹
ドアを見つめる傑を蒼空が見上げてじっと見つめてた。そして小さな口を開いてさ。
「傑さん。痛くても苦しくっても…それでもお母さんは僕を産んだ後も妹達をお腹を痛めて産んでくれたんです」
傑が蒼空を見ると、その視線は息子が服を両手でぎゅっと握り締めてる小さな拳に行っていた。
どんなに痛いと知っていても、苦しむ事だと分かっていても何度も兄弟を産んだハルカ。それを知りながらも、その痛みをどうする事も出来ない悔しさは僕と同じく、蒼空も、僕の脚にしがみついた夕陽も皆気持ちは一緒。
傑は慈しむ笑みを浮かべ、うん、と頷いてしゃがみ、息子の頭に手を乗せる。
「お母さんを大事にするんだぞ、蒼空……夕陽もね?キミ達の父さんは頼れるようで頼れない所があるからねー…」
「んん~?どういう事かな?すーぐる??」
「はは…冗談冗談。一家の大事な瞬間を迎えるのに私は邪魔は出来ないからな……悟、鍵。あんな道のど真ん中に停めちゃ邪魔だし、車庫の方に私が停め直しておく。
子供が生まれたらその時に鍵を返しにくるよ」
にこ、と笑う傑は手をこちらに差し出して待ってる。この場は僕たち家族で新しい命を迎えてくれって。
「さんきゅ、傑……助かる…」
ポケットに突っ込んだ鍵を傑に渡し、子供二人の背を押しながら僕たちはやっとドアを開けた。
力むハルカとそこには硝子と京都から来ていたマリアも手伝いに来てる。僕達はハルカの側で手を握り、肩を擦って新しい家族を迎える為にハルカを応援した。
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