第39章 七つの鎹
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ギャギャギャッ!と車体が横向きに傾き左右に揺れて停車する黒のレクサス。
窓の外には砂煙。その煙が去るよりも先に運転席のドアを開け、急いで運転席から飛び出した僕と後部座席から遅れて蒼空と夕陽を抱えて後に続く運転が荒いとぼやいてる傑。
他の子供達は預けていて、今日は長男と長女を代表に連れてきてる。子供たちはどの子であれ確かに大事な家族だけれど、連れて来るのに全員は難しいもんね…?
今は高専の医務室……、個室で痛みに堪えてる彼女の元へとただただ走って急いでいる。
五条家にまた新しい家族がやってくる。
それは外部から、じゃなくってハルカのお腹で育ってこの世界に生まれ出るって事の意味!
その産まれてくる瞬間がすぐに分かるわけじゃない、兆候があってもそれが五分後だとか一時間後ってわけじゃないからね…。
──今の僕は三十七。ハルカは三十ニとなる。
長男の蒼空はしっかりと呪術が扱えるようになった(と言ってもまだまだ僕に至らないけど)八歳の男の子。
長女の夕陽はひとつ下の七歳。増々ハルカに似てきて可愛くて、パピーとしては同級生の男達を娘にどうにかして惚れさせたくない気持ちでいっぱい!まだまだ可愛い盛りでこの子が将来お嫁に行くとかリームー、行くならもれなくパパも付いていっちゃう!なーんて夕陽に言ったら、ハルカそっくりな視線を僕に向けて「いい加減にして?パパ」って怒られちゃった。
次女は六歳、双子は三歳。三男は二歳で、今日生まれるのは……七人目の女の子が、この新五条家にやってくるかもしれないって事!
"かも"っていうのは難産であれば日付を跨ぐかもって意味でね?
こういう一生に一度、新しい家族のやってくる貴重なシーンには是非ともお目に掛かりたい。間に合ったり間に合わなかったりしてるしね、人の体から人が生まれるっていうのはいつだって手に汗握るんだ……。