第39章 七つの鎹
私自身は何度も危険な目に遭ってるけれど……。
そのせいでトラウマを植え付けられて、二度と消えることのない見えない傷だって心に負った。今は当時ほどじゃないけれど、悟に優しくその傷跡を塞いで、覆ってくれてもらっても穴は絶対に消えない。記憶も実績も消せやしない。
それをまだまだこれから色んな事を知っていくだろう、蒼空や夕陽に味わえ、というのは酷なもの。それは女だからとか男だからと関係なくね。
もちろん、はい許しますだなんて聖人のような心を私が持ってるワケじゃないしコイツらを許せるワケがないじゃん。
『……許せるワケが無いでしょ。死なない程度に、泣いて縋って助けを求めて、死にたいくらいに絶望するくらいに痛めつけて情報を吐かせるよ』
もっとも情報を吐いたからといって拷問が止まるとは限らない。
私を守るためでもある悟の同行。監視役。
それは今回に限っては私のストッパーなのかもしれないな、とこの瞬間に察してる。
……可能な限り、私も暴走しないように気をつけよーっと!
カツ、カツと座る男の間にまで近寄って。にこにこと笑みを浮かべつつ私は両手のひらを見せる。
『つーワケで、優しい尋問は端から期待出来ないって分かってるから……小さくても痛いモノをじゃんじゃん与えていくよ』
そのまま肩を見て、たんっ、と拘束されたふたりの肩に片手ずつ触れる。
流し込んだ、背骨沿いに刃物で傷を付けた痛み。
以前の風呂上がりの悟が「背筋に出来た出来物ってなんで痛いんだろうね…?よし、試しに取り入れてみようよ!」と商品開発ばりに当時、指を鳴らして気合いを入れていた。そして後日に尋問を任された際に忘れず小道具を持って痛めつけていたんだけど。
死にかけるようなモノでなくても痛いのは痛いらしく、二人揃って背筋をピンとしてもぞもぞと芋虫みたいなアクションをしてる…。
それを見た悟は首をフクロウのように傾げ始めた。