第39章 七つの鎹
立ち止まった私の腕を掴み進めと言わずとも一緒に先へと進む悟。私達の進行方向には観音開きのドアが見える。
その先なんだ、来て早々に尋問する相手の居る場所ってのは。日の目を見ない、薄暗い事をする場所は……。
『……別に私は激しくないもんね』
「いーや、激しいですー。うきうきしながら指をポンポン、腕もばっつーん!って切り離すし、あまり抵抗したり馬鹿にする男ならちん、」
『ほらもう到着するから無駄口叩いてんじゃねえよ~?』
にゅっと突き出た下唇。「別にいいですよー」と両腕を頭の後ろに組んで呑気に向かう、京都の地下牢。
扉を開けた先には見張りがふたり居て、一人は木枠の牢屋前に。もうひとりは壁沿いにくっつけられた一人用デスクを前にし、椅子に座ってデスクライトの下の書類を眺めてたみたい。
そのふたりが私達を見て、椅子に座ってた人は立ち上がり両者背筋を伸ばして立つ。
「「お疲れ様です!」」
「はーい、お疲れサマンサー!なる早で終わらせるから宜しくぅ」
私も軽く頭を下げて挨拶した後に、質問内容が書かれた紙を持ったデスク前の者が悟に差し出す。それに目を通してる悟。
一緒になって悟が持ってるその紙面を覗き込めば、呪術を使用しての呪いを祓って荒稼ぎをしていた事や、呪物を使って逆に呪いを非術師に取り憑かせて自身の元に来させる……という事が書かれてる。
それから……。
ちら、と悟の顔を見上げる。彼は黙って口元を一文字に、そして斜めにしている事から気に食わないって気持ちだと思う…。
紙面には判明してる罪状として私についても書かれていた。
"五条ハルカ、その子供ら蒼空・夕陽を連れ去ろうとした"という文字。私自身最近危険な目に遭った覚えもないし、何かやらかしたという身に覚えがない…。最近とは言わず結構前とかかもしれないけど。そういう記録も重要だろうけど、木で出来た如何にもな地下牢内に見える、締縄や呪符の厳重な体制の中で座る男……二人組は初めて見る顔だし……。
ここの所京都には来てなかったんだけど、自白したんじゃないなら誰かがこれらの情報を調べ上げてるって事だ……。誰だろ、冥冥かな…?