第39章 七つの鎹
行きたい、とつぶらな瞳で見上げる顔に少し罪悪感はあるけれど、遊びに行くわけじゃないし仕事に向かうわけで……。学長も今回の呼び出した内容的にほのぼのとした空気で話が出来るわけじゃない。それは内容を知ってる歌姫も、悟も知ってるわけで私含む大人は、可哀想だから子供も連れて一緒に行こうなんて気軽に言えるわけがなかった。
その空気をまたも読まない人がひとりここに居るって事を忘れてましたわ。
「僕はお爺ちゃんの所行きたくな~い!」
チラチラと私を見てくるけれど、これはアレか?ダチョウ倶楽部みたいな連鎖を起こせってか?行っておくけど、行きたくないって行きたがる子供が言うわけないし、産まれて数年の子がネタ知ってるわけじゃないんだぞ?とその子供のフリをする悟をジト…と無言で見れば、大きなため息がひとつ聴こえる…。
「来て早速だけど小さい子達は後で学長の所に私が連れてくから、後ろの大きなお子様はハルカが学長の元に連れて行ってね?」
『うちの子見てくれてありがとうございます…、こっちの大きなクソガキはお任せ下さい、連れていきますので。
大人しくしていられると思いますけどよろしくお願いしますね?』
「っあーん??誰がクソガキだって~?」
頭上からの声は置いといて。屈んで見上げる二人に少し屈んで視線を合わせる。ぱちくりとした悟似の瞳と私によく似た瞳が私を見ていた。
『じゃあ、いい子にして居られるかな?』
「「はいっ!」」
繋がれた手ではない空いた手を挙げたのを見て、私は頷き背を伸ばして。この子らは大丈夫、日の当たる所で元気に待っていられるはず。その間に私と悟は日の差し込まない、暗くて陰湿な場所で仕事をしなきゃいけない。それを一緒に同行させるなんて、小さな身体と心に大きなダメージを負ってしまうから避けたい所……。
──今回、京都にはただの出張じゃない。
東京でもやっているような事で、治療とは正反対の事をする為に出張しに来た。それを頭に、歌姫に一度頭を下げて悟と一緒に荷物を置きに寮へと向かった。