第39章 七つの鎹
『くっ…幼児還りして……ッ!あ、五条悟の尊敬ポイントが五下がる予感がする、私の中のスネイプ先生が減点を勧めて来てるね!』
「それは大変だ!」
ささっと背中から離れたのを見て、地べたに置かれた荷物を空いた手で拾えば、それを素早くひったくっていく悟。
悟の尊敬ポイントについては冗談だけど、子供の前だし親として教師としてあまりふざけるのも良くないぞ?と視線を送った後に、私はチビふたりに挟まれた歌姫の元に足を進ませた。
蒼空はそのまま歌姫と手を繋いだまま。夕陽は歌姫と繋いだ手をぶらんぶらんと少し揺らしている所からふたりの性格が見られる…。
『……お疲れさまです、会って早々にすみません』
「いいのいいの、気にしないで~?小さくとも礼儀を知ってて人懐っこくて、人の気を逆なでする子らじゃないし。どっかの誰かさんに似なくて良かったわー」
『よく言われますー』
「この調子で内面が誰かさんに似ないようにしてって頂戴ねっ!こういう素直な子こそが未来には必要だと私は思うわ!」
力強い歌姫の言葉にうんうん、と頷きあって居れば、じゃり、と背後から近付くその誰かさんの足音。
「誰かさんって誰の事~?」
名を伏せ、視線をその誰かに一緒に向けてからすぐに歌姫と視線を合わせた。
子供に対しての見守る大人の視線でも、悟に対する軽蔑の視線でもなく真剣な表情へと変わった彼女の顔。
「それで、話は変わるんだけど荷物を持ってるって事は学長の所にまだ行ってないんでしょう?」
『……はい、今来たばかりなんで、持ち歩くのもなんですし先に荷物を置いてからまずは話を聞きに行こうかと……』
片手に引いたバッグを見せる。少しだけキャスターが動いてガガ、と音を立てて。荷物を見た歌姫もそりゃあそうか、という顔で頷く。
「じゃあ、この子達私が預かっとくわ。その間に荷物を置いて学長の所に行ってらっしゃい」
「えー?お爺ちゃんとこ行くなら一緒に行きたいっ!」
「あたしも行きたい!この前のバターの飴美味しかったってね、ありがとうって言うの!」