第39章 七つの鎹
「なによっ!僕とは遊びだったって言うのっ!?」
『おい、子供が真似するからそういうどろどろとしたドラマにありがちなのやめろ~?』
ただでさえ物覚えが良い子供。親をよーく見て育ってるんだから、悟を真似されては困る。
彼をゆるく説教しようとする私を遮る彼は矢継ぎ早に口を動かした。
「大丈夫でしょ、まだ理解出来ないって!
でもチョコラータがセッコにするように撫で回すのとかどうなの~?ねえ、ハルカどう思う~?つかなーんで僕よりも歌姫なんかに懐くのかなあ~……すぐヒスるのにそういう金切り声あげちゃうのって子供もこわーいって寄り付かないんじゃないの?」
「オイッ、そこ!聴こえてるんだけど!?」
黒い布越しの目元をじっと斜め下から私は覗き込む。こっちに顔を向けて僕何か悪いこと言いました?とでも言いたそうにしてる所に一言。
『尊敬される人ほど子供にも人気なのさ。一方、尊敬されないような人は……まあ、お察し?』
「あーん?カッチーン、なにそれ、僕に皆の尊敬の念が無いって言いたいのかな~?んん?」
おっ、不機嫌そうな口元ですこと。
立ち上がった歌姫の両手にちびっこ。歌姫にドヤ顔をされる悟は多分、アイマスクの下で眉間に皺を寄せているね…。
「先輩を尊敬しない所や自分勝手にするからなんじゃないの~?」
「はあ~??僕が尊敬するのは僕の隣に立てるくらい優秀な人材ですぅ~、弱者は尊敬にも値しませーん」
「弱者って誰だこらっ!?」
ギャン!と口喧嘩が始まりそうでも子供二人はしっかりと歌姫の側から離れない。その事実でヒートアップしそうな気配を察した。
ここは飴タイムですね。
『あーどっかの自称最強を尊敬してた貴重な一票が白紙に戻されそー、喧嘩を売るようならここは票が多い所にでも行くかなぁ』
「…っ!貴重な一票ハケーン!確保だルパァン!」
ザザッ、と靴を鳴らし私の背後に回るとボト、と荷物を下に落としてリュックサックのようにしがみつく大柄な男。それを前方からチベスナ顔で三人が見てる。
蒼空も夕陽も見慣れた光景でまたやってるよ……って気持ちが伝わってくるんですね、視線で!
『おいそうやってすーぐ……離れろー、背中に張り付いて…あんたはショウリョウバッタか?』
「やー!」