第39章 七つの鎹
長女を撫でてた私の手が止まると、撫でていいか?と許可を得て再び私の手を借りて夕陽の頭をゆっくりと撫でる鎹の意思。
私は生まれたこの子の髪色を初めて見た時に、私のこれまでの体験の事や領域内の魂となって囚われた女達の髪色と一緒の色で産まれてきてしまった事で頭がいっぱいになって……この子は生まれてすぐに死んでしまうんじゃないかってさ。それが生まれつきの髪色と知り、なんとか守れないかと色々考えたりして、結局は予防策のひとつくらいしか引き出せなかった。
私の地毛をひとつ混ぜ込んだ、遠くからでもたった一回守る方法くらいしか……。
他にこの血を残す手段と言ったら、残す血を増やすだけ。
自身の年齢もまだ大丈夫。悟だってその気しかなく未だに(たまにだけど)サッカーチームまでもうちょっとだよ?と頑張りたがるし…(そのやる気は別に向けて欲しいものだけど)
『もう少しだけ、私も頑張ってみるよ』
『"そうだな、女は三人、けれどもその子らが成人するか、血を繋げられるかは定かではないからな。途絶える前にオマエ自身が可能な限り増やすべきだろうな"』
……。
血を絶やさないため、と言うけれど。私の居るこの春日家の発祥は鎹。その彼女の在り方は今はどうなんだろう…?
私は…いや、母の時からだろうけれど禪院家で頭がいっぱいになるほど他の人間達を呪う理由は無い。
私ならさ…、そりゃあ部屋に引っ張ったり双子の妊娠時だとかの直哉のデリカシーの無さにはイラッてきたけど、そこは吐瀉物を噴射してなんとか収まって。小悟と小春がまだお腹に居た頃の五条家での御三家会議では馬鹿にしたけど悟が言い負かしてた。
生まれながらに体に術式回路が刻まれてる。双子であるけれど互いに父親と母親の術式を受け繋いだ末の子達。悟曰く、「普通の呪術師よりも弱いけれど…」が不安で、大きくなったら私のお守りをプレゼントするつもりだけど。
私やこの子達もきっと、名字が五条となっても変わることない術式の元、春日の一族。自らのルーツとなった禪院家を呪う事はしないでしょう。この先紡がれていくこの子からの更なる小さな命はこれまでに代々継いできたどす黒い執拗な想いはどんどん薄れていくんだ……。