第5章 "好き"が止まらない!
椅子に座って机で頬杖を突く釘崎。私も頬杖を突いて授業開始を待つ。殴った衝撃で崩れた消しカスの山を指先で盛り直す。
この流れなのか、話題は勉強。勉強トーークが始まった。
「ねぇ、みたらい。英語とか習う必要ある?海外に関わんなきゃよくない?」
『そう思ってた時期が私にもありました、ちょっとだけ役に立つよ、"This is a Pen"だけは一生役に立たないけど』
「えっマジ?」
『マジマジ、どうしても役立てたいってなら海外の売店とかでペン指して質問すれば良いよ』
授業が始まる、あと2分。
その時私の携帯がブブブ、と震えた。頬杖を突いたままに取り出してメッセージを読む。家入硝子という差出人……医務室にお呼ばれだ。
仕方ない、授業開始前だから途中で参加する事になりそうだな…、机の上のものはそのままで私は席を立った。
『家入さんに呼ばれてるから行ってくる。多分授業中に戻ってくる事になるんじゃないかなー…』
「「「いてらー」」」
反転術式を邪魔しない様にと配慮された、ぶかぶかの袖を振って私は教室を後にした。
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ガラ…、と医務室を開ける。そこには家入と……白髪。
ちら、と室内を一瞬見ただけでも他の人物は見当たらなかった。
『失礼しまー………失礼しました』
「待って?」
──ピシャン。
閉じてそのまま押さえれば室内から慌ててドアを開けようとする悟。さっき開けた時室内では腕を組んで立ってる家入と、椅子に座る悟が居た。状況からして悟が怪我をしたんだろう。
けれども私は聞いている。悟は自身の怪我を治せると。
治せる事を知っているのでこの場に私は必要ないと判断した次第。ドアを取っ手や引っ掛けをそれぞれ押さえつけて足で踏ん張った。
「この恥ずかしがり屋めっ!」
『恥ずかしがってる訳じゃないわっ!自分で治せるでしょ、あんたは!』
「僕だってハルカに治して欲しいのっ!そういう時もあるの!優しさに包まれたいのっ!」
『ユーミン聴いてろ!優しさに包まれるから!』
「痴話喧嘩は他所でやれよ」