第39章 七つの鎹
こっちが黙っていれば好き勝手に言いやがって……。
あの子は呪術を使用後の効果だけを見れば優秀だよ。反転術式でもないのに治療ができて、今まで吸い取った怪我を触れた相手に流し込み、同じ目に遭わせる……ただ、デメリットがあるって事を除けばだけどな。
こうややこしいデメリットを作り出した原因は初代なんだろ。それがずるずると体制を変えずにハルカの代まで引きずられてしまった。
悔しさに拳を握りしめた。コイツらは彼女を道具として見てる。あんなにも可愛くて、優しくて……僕を愛して、愛されて。僕の子供を喜んで作ってくれるし産んでくれる。今だって元気な双子を産み、その子達含む僕らの子供達五人を任せてしまった愛しいハルカを脳裏に思い浮かべる。
彼女は僕だけのものだ、コイツらに良いようにされて勝手に寿命を縮めるような事はあっちゃならねえんだ。
「あまり…彼女を道具のように扱わないで頂きたい」
「なにをいう、このように使ってこそ真価を発揮するんだろう?治療する・痛みを与える…、そうする事が五条ハルカの呪術師界でのベストな振る舞いなのだよ。非術師として今更平凡に生きてなど居られないだろう?
まさか以前、非術師の病院での周囲の人間達を奇跡的に治したと騒ぎがあった事を忘れたか?」
得意げな声色のジジイ。それに同調して「そうだ」と影が頷き、更には「五条家で独占するつもりか?」と笑い声混じりのババア。
それだけの術式にはそれなりのデメリットがあるという事は知られてるはずだというのに。春日家ってのは治療に特化してるからって面白がって治療ばかり頼まれてまさに"身代わり"にされてはたまらないから、きちんと伝えているってのに……。
「彼女には充分に拷問の技術は覚えさせてあるつもりです。これ以上はあなた達が春日の女にさせてみたいってだけの実験でしょう?」