第39章 七つの鎹
僕もその話を聞いて、一度保留後ハルカに直接説明をしたんだ。
非術師として綺麗な世界を見ていた彼女が呪術師の世界の拷問っていう裏の世界を知らなかったから『やってみようかな…』という軽めな返事を受け止めてしまって、それで許可してしまったのも悪いんだけど。
取り寄せた拷問器具や海外から借りたもので痛めつけてはハルカにそれを覚えさせていたわけ。
ギリギリ死なないように作られてるのが拷問ってもんじゃん?長く苦しめる痛みだけのもの、傷を残すもの、ゆっくりと死に追い込むもの……死んでしまえば式髪へと取り入れることは出来やしない。死んだ人間に対しては死体に呪力が残っていたとしても、ちっとも回復しないのが硝子とハルカの術式の違い。
だから目の前で拷問により堪えきれずに死ぬ、という場面を何度か体験したハルカ。死ななくても治療をしたとはいえ、相手は善人じゃないんだ。死んでも構わないという、処刑対象を連れ込んでの"学習"
何度も何度も痛めつけて、命乞いをする光景は口では大丈夫という彼女の精神を蝕んでいた。
昔みたいに時々夜に魘されてさ……、優しく撫でて抱きしめて、寝かしつける事もあった。
──きっと、この学習のせいなんだろ。ハルカには直接言ってないけど、呪霊ならまだ良かったものを呪詛師という同じ人という種族での実験。呪術師は呪いを祓うというのに彼女だけは人を傷付ける、殺すという事をかつてのクラスメイト達の日陰でやらされている。
怪我を治すという事は人の為になるからと頑張っていたんだけどなあ……。
ハルカははっきりいって、内面は人を傷付ける事が向いてないんだ。
だからきっと、その経験をして当時お腹に居た子がショックで流れ、その次の子も芽吹かなかったのかもしれない……。
また、繰り返すのか?と僕はアイマスクを首元まで下げる。額を覆い、擦れた布の代わりに逆立っていた前髪が額に掛かった。