第39章 七つの鎹
思わず漏れた舌打ち。歩く速度もこの件を早く終わらせたいからと自然と速くもなる……。
ああ、ヤだねえ~…!年寄りは若者の家族団らんの時間をすーぐ壊すんだから。
ぜってえアイツら信号待ちの人間とか歩道の子供の列発見したら突っ込んでく老害タイプだろ?コンビニもドライブスルー間隔でダイナミック☆入店するっしょ…。
マジでありえない、生きた時間が長いだけが取り柄のそのシワクチャな人生の中で人の心ってか道徳心を学ばなかったのかねえ~?
ドアを開け、薄暗い通路へと足を進ませて、ドアを開けた暗闇のその先にはいくつもの揺らめく暖色の小さな明かりの空間があった。本体はそこに居なくとも障子越しに術式で僕を待ってるアイツら。人をわざわざ呼び出してこれだもんなあ~……イライラしながらも総監部へと呼び出された僕は文句を飲み込んでその中央へと進んだ。
老人どもや頭がカチカチの奴らの影が映る障子越しに囲まれて僕は後頭部をシャリシャリと掻いて鳴らす。
「はい、五条悟、呼ばれて来ましたけれども私に重要な話とは何でしょうか?」
早く終わらせろー、こんなん。
今すぐ帰りたい!どっかのヒーローが弟子に言ったみたいな、20文字以内で簡潔に纏めて言って欲しいもんだね~。
どいつから喋るのやら、と待っていれば斜め前、口内で裏板から舌がにちゃ、と音を立てて離れた耳障りな音を聞く。
「先日捕らえた呪詛師二名の拷問。そいつらを利用し五条ハルカに新たな拷問法を覚えて貰いたい」
「……ええー…また、ですか?私の妻に拷問を学習させろ、と?」
アイマスクの内側でその馬鹿げた提案を出した方向を睨む。
彼女にこうやって頼みたい時は僕を通す。僕からハルカをレンタル品のように借りて良いですか?って扱いをするのは、僕が許可をしないと駄目だと何度も伝えてあるから。
尋問に口だけでは精神的な責めが足りず暴力が必要となるとそこからは拷問の時間だ。
一年以上前の拷問後に指や爪で情報を吐くに至るものか?と悪巧みしやがったのがこの流れだった。