第39章 七つの鎹
『……ん、』
麻酔もありぐっすり寝てたみたい、と目を開ければ医務室隣の、何度も見上げた見慣れた天井。
側でわさわさと動く白髪がちらつく。アイマスクして頭が動く度に揺れる悟の髪…。
ぼーっと見ていると私の視線に気が付いた悟が「ハルカ」と私の名前を呼んだ。
『さとる……、』
「やあ、ハルカ。起きた?」
『ん…起きた……』
すぐ隣でぐずる泣き声に真横を見れば私の頭の横にタオル生地で大事に包まれ、もぞもぞと動くもの。
それから悟の腕の中の包まれた同じ大きさのものを見て安心した。私の横の子は今ぐずり始めたけれど悟の抱いてる子の方がさっきから大きな声で泣いてる子供。
身体を起こす前に硝子とのやり取りを思い出して、私に付けられた切られた痕跡を治療して体を起こせば真っ先に「おはよ」と夕陽が笑い、私も『おはよ』と子供達に笑い掛けた。
『で…どっちがどっち…?』
ふたり居るんだ、しかも包まれてる。彼に抱っこされている方か、それとも私の横に寝かされている方か。
男女という事は二卵性双生児。双子だからと鏡に写したようなものじゃないとは思うんだけど…。首を傾げて彼に伺えば、悟は揺すりながら小さな子供を抱き慣れた腕の中を傾けて、しわくちゃな顔をして泣いてる小さな顔を見せてくる。
「僕のは男の子……小悟(ショウゴ)、キミの横でお兄ちゃんのギャン泣きに釣られてんのが小春(コハル)だよ」
『あ、じゃあこっちが女の子ね、はいはい…』
すぐ横の子を抱き上げて二人して泣き声を上げてるのを見て、蒼空達は悟を見たり私を見たりとおもちゃに目が移る子猫みたいに首の動きが忙しい。
「てかお腹減ってると思うんだけどどうする?オマエが片方で飲ましてる間僕がもう片方で飲めるように支えてよっか?」
『いや、そりゃあふたつ付いてるけどさあ~……双子持ちって普通、そうやって一気に飲ませるモンなの??』