第39章 七つの鎹
悟は子供たちより少しだけ視線を上げた、私の腹部へと視線を向けてる。
彼に見られてるそこは着物を着てても分かる、少しだけ膨らんだお腹。そこをじーっと見てから私の顔を見上げて言いたいことが分かるよな?ってその笑顔が無言で圧力を掛けてくるようで。
『……はぁい』
「ママ、おへんじははい、でしょ」
私がさっき言ったことを繰り返すように、背の低いドヤ顔の長男にそう言われ、見上げるその視線から目を反らしながら肩を落としつつ『はい…』と言い直すと母と子のやりとりを見てクククッ、と笑う悟。
「子供に注意されちゃあ駄目だろ?」
『……チッ、なーんか悟に言われるの、ムカつく。
ジャーマン?シュークリーム?会議前にお好みでパワー系のご馳走を振る舞ってあげるけど?』
「オマエのそれ美味しいものじゃなくて痛いやつじゃん!てかお腹に子供達が居るんだからプロレス技も駄目だろ!
小さな五条キッズが悪さしないように僕の代わりに見るだけでも重労働でしょ~?そんだけで充分じゃない。僕は当主故に会議に集中するから見てあげられないんだし」
腕をひとり組んで首を傾げながらそう言う悟から背の低い子供達を見る。直射日光でなくても部屋に差し込む光だけでもきらきらとした瞳。私……、というよりも悟の遺伝が強く、白髪でありながら明かりで白銀に輝く髪をした頭が三つ、段々に並んでる。
さっきまで嬉しくて走り回る子犬みたいになってたけどこの子達は基本的に良い子なんだ。私達にそっくりな子供達を眺め、くすりと笑って悟を見上げた。
『重労働ってか皆いい子だもん、悟のわがままに付き合う時に比べたら軽作業さね!』
「あーッ!プッツーン…、いいのかなあ~そんな事言って!拗ねるぞ?拗ねて今日の会議中、僕、ひとっことも発言しねー!」
『お喋り男がンな事絶対に出来ないクセに~?』
「ふーん?やってやろうかな~?ん~?」
…とかやってる場合じゃないんだよね、と私の前で頬を膨らましている、この部屋で誰よりも子供な彼の温かい背に触れて撫でて。
「……ねえ、遅刻ギリギリまでここでイチャイチャしてく?」
『しません、なんで実家で会議に遅刻するの。今日だけでも当主らしく振る舞ってくださいね~?』
さっさと会議を始める為にいつも遅刻しがちな悟の背中を軽く押した後、悟は末の子の手を。私は上の二人の手を繋いで部屋を後にした。
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