第39章 七つの鎹
「祓いきらずに弱らせるっての、手加減難しいなー」
『そうだねえ、私の"罰祟り"は手足をもぐっつっても悟には念押されて使っても一回だけねっ!ってサ!』
首や心臓などの攻撃なら多くの血液がぶっ飛ぶけど、手足はそんなに失われないのにね?
建物内に響く私達の会話。そして歩を進める度にガラスや小石、ここに忍び込んだ人達が置いてけぼりにしていった様々なゴミを踏みしめる、私達の忍び込む音が暗くて広い空間で響く。
「制限されてるってのも難しいもんだよな。便利そうだけどハルカ自身に返ってくる諸刃の剣じゃあ仕方ねえけど…」
『でも致命傷レベルじゃなきゃ大した事ないんだよ?悟ったら結構過保護なんだよねー、ぶっちゃけ子供たち以上に私に向けた制約がある気がする~……』
ドアの外れた部屋をそろりと覗きこみ、そこに何も居ないのを確認したら次の部屋を覗きに進んでさ。
虎杖が振り向きながら私の先を行く、話を続けながら。
「そりゃあハルカはさ、五条先生の奥さんになったからだろ?子供だって今は三人も居るんじゃあのベッタベタな先生にとっちゃオマエは大切な存在なんじゃねえの?」
『うーん、大切にされるのは嬉しいけどさー、もうちょっと自立ってか、"個"としてをさあ……』
個人での活動ってワケじゃないよ?誰かが側に居たほうが良いって私も何度も危険な目に遭って学んでるし。
個人として見て欲しいっていうのは私が持ってるものを危険でない範囲で充分に使わせてって事なんだけど。
……彼を任務先に送るのはいい。「一緒に降りる?」とホイホイ着いて行ったとしてずっと彼に守られる。悟は強いし、頼れるし、最初の頃は強さにときめいちゃったりしてさ、今じゃ守ってもらうって事に慣れてしまった私は、呪術師なら誰もが知ってる特級呪術師五条悟という人間が夫である事を誇りに思ってるし、格好良い!って昔と変わらず今だって思ってるけど。
──少しくらい、自分の身が守れるって。悟が気を遣わないように出来たなら……。
ひとり拳を握りしめる。心配は嬉しいけれど、守られるだけの存在じゃ戦える力もお飾りなだけ。
少し進む虎杖の足が止まって、私も釣られて足を止める。遠くに小さめな呪いがふよふよ浮いて見てるだけなのは確認出来て、襲いかかろうとはしてない。
だからって完全に警戒は解かないけれど……。