第39章 七つの鎹
片腕を上げ顔の前で印を。そして唱えれば森の上空からドロドロと夜が任務場所周辺へと満ちていく……。
帳が降りると廃墟のニ階や三階の窓の割れた空間から蠢く人外の形。帳の効果で呪いが早速炙り出されている……。
建物に入る前にそれらに注意をしながら、任務を効率的に進めていく為に虎杖と軽い打ち合わせをした。
ガチガチに計画しても私も虎杖も頭脳派ってワケじゃないもの……伏黒だったら多分、何パターンか計画しただろうけど。
「ハルカは呼び寄せるから狭い所じゃなくて出来るだけ広いとこ歩いて!そんで俺たちで低級を蹴散らしながら程よい大きさの呪霊取っ捕まえようぜ!」
『了!』
なんだか夏の夜のカブトムシ狩りの小学生の気分に近いものを感じつつも(遊びじゃないけど)ザリ、と一歩虎杖が進むその後に私も続く。黄色と黒の薄汚れた立入禁止のテープを潜って、いざ建物の中へ……。
入って早々に待ち構えていた呪いを虎杖が拳を振りかぶり、呪力を込めて拳を打ち込んで祓っていく……
一体、二体…三体。
低級の全てではないけれど、はっとして私の数歩離れたヒビ割れた壁に警戒すれば、虎杖が祓ったタイプとは違う見た目の低級の呪いがこちらに向かって飛びかかろうとしていた。
しゅる、と右腕の皮膚上から式髪を生やし、あっという間に伸ばしきる。それで急遽何本かに撚り合わせたいくつもの束で叩きつければ触れた所から燃え、呪いは触れた場所が燃える事に痛みか驚きか…、藻掻きながら地べたに転がった。
両手で顔面を抑えながら「ギャアアア!」と叫んで。
あたった場所が場所だから目潰しが効いてて、すぐに行動に移せない呪い。大きさも私より大きい。建物外に置いてきたゲージに収まるだろうし、捕まえるなら今が絶好のチャンスだけど等級は任務を出した方々のご希望の等級以下……低級には用は無いってね。
『……ん、コイツはナシ!祓いきりましょう』
仕方なくそのまま撚り合わせたものを更に捻じり、棒状にすると先端だけ鋭利にして。
無防備となった呪いの身体に突き刺せば、どろりとした紫の体液を撒き散らして床にドサ、と倒れた。溶けるように霧散していく呪いの形……。
呪いの小団体を祓い終わって、進む先と虎杖を見る。彼は手をぶんぶんと払っていずれ消える体液を手の甲から落としていた。