第5章 "好き"が止まらない!
起床したてよりテンション高めの悟は今日の当番の釘崎に振った。
彼女の号令と共に、起立、礼、着席をして朝のホームルームが始まる。今日の呪術については外でやるらしい。午前中は普通の科目だ…げぇっ、数学ある日じゃん…、とまだ慣れぬ曜日の科目を見て私は少し気分が沈んだ。
「──って事で、とりあえず今日の帳番はハルカねー、昨日補習で勉強したから大丈夫でしょ?」
『はーい』
ふたり程の刺さる視線に振り向かないように乗り切る。
そこで余計な事をするのが五条悟という男だった。
彼は私を見て、釘崎や虎杖と見ていく。見ていくってか、顔が向いてる。口元はなんだ?という疑問を浮かべたややヘの字の表情。
「僕が教室に入ってきた時もハルカにメンチ切ってたけどオマエたちなんかハルカに喧嘩売ってんの?親父さんを負かすモノホンの奴だから危険じゃない?」
『その言い方さぁー…』
ヤンキー的ポジションにされるけれど、本当に拳を振り抜いた初めての相手は呪いであって。父親や兄貴と喧嘩の練習は含んでないけれど。私は中・高とかでボスとかそういうんじゃなかった。普通の女学生として学生生活をエンジョイしてたわ。
ふんっ、誤解されてるよね!
悟の質問にガタ、と勢い良く椅子を膝裏で弾き飛ばし釘崎が立ち上がった。思わず見てしまった私。そして視線もばちこり合ってしまった。
その視線はギラつく獲物を見付けた狩人。ひぇっ…!小さくも身震いしちゃった。
「先生!昨晩みたらいハルカさんがお洒落してどっかの誰かと逢瀬してたに違いないんですが!教えてくれません!取材の許可を!」
『ちょ、まっ…釘崎ィィー!』
ぶわ、と瞬間湯沸かし器のように熱の上がる体。よりによって目の前に立ってる答えみたいな奴に…知らないとはいえ聞いちゃう!?
釘崎と悟を見て頭を抱える私。悟はこちらを見てにぱっ、と笑った。そこにタイミングよくチャイムも鳴る。こいつ、この空気をかき回してく気だ。