第5章 "好き"が止まらない!
朝の支度はちゃんと出来たから良かった。洗濯物の部屋干しにベッドメイキングに化粧と、軽く朝食を取れたし。あの迫る時間の中であんなにもひとりで動けた自分に褒美をあげたいくらいだ。
教室に入る時は平然としているけれど、途中まで猛ダッシュで走って息を整えている。
……ちなみに焦る私に対し悟は遅刻常習犯なので、走ることなくのんびり歩いていた。
挨拶も済ませた事だし、と私は自分の席に座ってため息を吐いた。
朝っぱらから全力疾走は無いわー…。
「で?」
ガガガガ、と椅子を引き摺って私の席に寄ってくるのは釘崎。
「…で?ハルカすゎん?昨日デートだったんでしょ?」
『な…ナンノコトカナー釘崎氏~?』
サッと釘崎から視線を反らす。そういえば寮から出る時に見られていたんだったっけか。時間間に合わないし、と完全にめかし込んでた私は明日(今日)に説明するとか言って逃げ去ったような。
視線を反らした先。いつの間に打ち合わせしたの?という位置に虎杖。
玩具を見付けた遊び盛りの子犬の様な目をしている。
『……ぐっ!』
座りながらに目の前に釘崎、右に虎杖。視線を合わせまいと左の空間を見る。伏黒はノッてない。良かった。
「おい伏黒ォ!お前もみたらいを囲めェ!」
「尋問かよ」
「釘崎が昨日の夜、みたらいが随分めかしてデートに行く所見たんだって!」
朝から騒ぐティーンズ。
左側に顔を背け、視線を合わせないスタイルで質問を受け付けないようにしているとガラッ、という助け舟。
勝利の笑みを浮かべ、とりあえずは乗り切った感。
私は無言で両腕それぞれをガッツポーズ…そう、コロンビアのポーズを決めて見せる。
「チッ…ホームルーム後だな…締め上げてやる…」
「ドアを塞ごうぜ、逃げられないように。そこは伏黒も強力しろよー」
『袋の鼠では…?』
「お前らなぁ……」
各々が席に戻っていく中(伏黒は元から自分の席に居た)1年の担任である悟がアイマスク姿でやってくる。
「おはようからおやすみまでっ!みんなの先生…一条二条三条四条…五条悟の参上だよ!」
『アッハイ』
「塩対応ありがとー!皆揃ってるね、野薔薇号令ー」