第39章 七つの鎹
378.
私が身に纏うのは呪いに耐性のある作りの上下黒のスーツ。それから離れた場所からでも治療出来るという、立場が分かりやすいように白衣を一枚上に重ねて着て、姿見に向かいながらひとり『よし!』と私が私に声を掛けている図。
別にこれは普段の仕事着なんだけどいつもよりも気合いを入れてんのよ。
今回、実験や試験用の呪霊を捕獲する為にと呼ばれ、極稀な高専外での、悟の送迎じゃない任務を言い渡されればそりゃあ気合いも入るってモンでしょ?
高専内の雑務ならひとりでも良いけど、外部でのソロでの任務は悟により許されていないから、今回の任務で組む懐かしい顔がワゴン車の後部座席に乗り込もうとした所で、既に積み込まれている、頑丈な檻が入ってる事で「そりゃそっか!」と助手席に乗り込む、誰が言い始めたか、通称火の玉ボーイ。
今回の任務、私は久しぶりにクラスメイトであった虎杖と組み、報告にあった呪霊を捕獲しに行くってワケです!
場所は東京郊外のとある廃墟。
そんなに広くない森の中の所有者不明の三階建ての建物。その現場が見えてきて入口前にワゴン車を停車させ、運転席から降りた私はストレッチをしていた。
実力として私の呪術師としての階級は二級、とされているけれど私の場合昇級しやすい現場に向かうことは滅多にない。だからこの実績のほとんどは治療面と拷問でのポイント。
準一級とかでもいいからもうちょっと上がってみたいじゃない?でもさ、悟は私には等級を上げる事に良い顔しないしそもそもあまり外に任務に出させてくれないし……。
現在祓いをひとりで出来る階級であっても、特例として私他一名以上との行動って決められてる。それは悟の我儘ではなく、特級呪術師としての五条悟からの提案。攫われるだとか貴重な治療要員だとかいろんな理由でその提案は見事に受け入れられて、私の当たり前だろう向上心は見事、頭上にかったい屋根を被せられて簡単に等級が上がらないという現実……。
──なので。
ワゴン車の助手席からバタン、とドアを締めて出てきた虎杖が大きなあくびをして左右に身体を動かしつつ伸びをしてる。動く度にコキ、ポキと骨が良い音させてる。
「ごめーん、俺寝てたわ!」
『ん、構わないよ?特にいびきもなく静かだったし、虎杖って確か、昨日遅くに出張から帰ってきたんでしょ?』