第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
「あえてだよ、あ・え・て。忙しいだろうからこそその疲れがぶっ飛ぶような癒やしをこうして送ってるんじゃーん……僕達の幸せのおすそ分けだよ~?」
口元がふにゃふにゃと嬉しそうな悟。
彼が携帯をしまった所を見ると多分、送信済みですね……ハイ。
「僕らの幸せは僕らのモノだけど、溢れんばかりのこの翼無きエンジェルズを世に広めたい!アイドル!呪術界に現れし新世界の神!
多分、次回のムーニーとかマミーポコのパッケージを飾るのはうちの子!」
……勝手にモデルに応募しないように願いたい所なんですが。大丈夫かなー…よく勝手に暴走機関車五条悟してっから心配になるわ。
『……絶対に応募とかすんなよ??』
「ウン、応募、僕、シナイヨ??」
『(ウワー…事後っぽい…!不安だ~……)』
呆れながらもハンドルを握り、ルームミラーから進行方向に視線を戻した。
『この時点で親馬鹿発動してるとか草なんですけど……あ、そろそろ本日最後の場所に到着するよ』
「了解、安全運転で頼むよ」
時折ナビを見ながらに案内のままに交差点を右折する。この任務に悟を送ったら追加任務が無い限り今日はこれでおしまい。
ハンドルを握り、車の前方から時々ルームミラー越しの悟を何度も確認してる。
蒼空を胸に抱え、チャイルドシートの娘をあやしてる。その息子を抱える手首には青系色のミサンガ。
何度も作り、どういうタイミングで治してくれるのか、複数着用した場合はどうなるのか?使ったものは以降どう扱えば良いのかを実験し終えて早速だけど身内である悟に一号を持たせている。
効果はもう確認済で、少しずつだけど呪術師によるミサンガに呪力を流せば私の式髪が反応して治癒してくれる、簡易的な治療呪具(……呪具って感じじゃないけどさ)は採用となり、こうして呪いと戦う人達がお守りのように身に着けてくれるようになっていった。
これで私も硝子も多少は仕事が減ったけれど、一度使った式髪入りのミサンガは私が吸い取るか、硝子が少し手こずるやり方で反転術式を行わないといけないらしい。
「リサイクルカイロみたいだな」と笑って零していた硝子の言葉。ただ、私の身体に直接生えてるものではないから使いまわしの回数はほんと数度程度。アクセサリーとしてのミサンガ自体もそうだけど、これは永久に使える事は出来ないみたい……。