第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
ふふん、と笑って撫でた私の手をぎゅっと握って離す、と手に興味を持ってる蒼空を見ながらに、振り返ってデスクの作り半端のミサンガを見る。まだ完成していないけれどきっと、完成時は歪な物に仕上がりそうな気配……。
最初こそ失敗はするだろうけど。何度も作って慣れて、着けていても恥ずかしくないくらいの出来になるまで練習しないとね。私の目の届かない場所でもこの子達を守れるように、作り慣れた私の式髪入りのミサンガでいつか必ずやってくるだろう、今は傷一つ無いその身体への危険から遠ざけられるようにしてあげたいから……。
娘におっぱいを飲ませ終えて、ずっと静かにご機嫌な顔で待ってた息子に離乳食を食べさせて。
しばらくしたらご機嫌だった娘が泣き始め、息子が味噌料理を見たアシリパさんみたいな険しい顔してる。こいつはダブルオソマタイム到来か…?と怒涛のオムツが不快でござるラッシュにせっせとふたりのオムツを替えて、ベッドの上で撫でて見守る中でうとうととしたよっつの瞼。
一時的に騒がしかった医務室にまた安心の静寂が戻ってきた。
『……ふぅ、やっと落ち着ける…』
安心したせいか、思い出したみたいにぐう…、という音が私の身体から聴こえた。
……息子と娘のお腹を満たすのは良いんだけど。そういえば私自身もご飯食べないといけないんだった。忙しなかったり集中していたせいで忘れていた大事な事を腹時計がしっかりと思い出させてくれた。
食べる機会をまた逃す所だった、ととりあえずはご飯が先だとバッグから私用のご飯を取り出してさ。
………ダッ…ダダッ…ダッダッダッタッタ!と近づく二人分の足音と来るなだとか悠仁ィ!という嫌なやり取りの叫び声…。
遅くなった昼食を半分ほど食べた所で虎杖と脹相(後ほど名前を聞いた)が医務室にばたばたと駆け込んできて子供含む四人に騒がれ、お昼を中断せざる負えなくなるのはまた別の話…。