第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
……なんか悪い人じゃなさそうだけど、少々ズレたお方だなあ…、と小さなハンガーラックからポンチョ型の上着を取って羽織る。買い物中悟に「これがあれば人前でもおっぱいあげられるでしょ?僕、他の男にオマエのおっぱい見られたくねえもん」と買ってもらったものだけど、意外とこういう来客がいる時の腹減りコールを受けた時に役立ってる。
……まあ、ポンチョ方のを付けて悟に「これがあれば僕が飲んでるのもバレないよねっ!」と吸われた事も多々ありますが別の話って事で…。
今更出てけ、なんて言えないし見えないようにお乳の任務を遂行しますわ。じゃないと腹ペコレディーがまたエンジン掛けちゃうし。
椅子に座ってその上着の中でもぞもぞと服をはだけさせて夕陽の顔を近付けさせた。待ってましたとすぐに咥え込んで空腹を満たそうとちゅくちゅくとおっぱいを吸い始めてる夕陽。
よく知らない自称兄の居る空間で授乳とか落ち着くに落ち着けないな~……と一応は警戒するなかでノック音とドアが開けられる音。座ったままにノックされた医務室のドアを見ていれば、顔に既にいくつもの傷を着け、砂埃や鋭利な攻撃を受けたのかボロボロの制服を着た虎杖が一歩医務室内に一歩足を踏み入れる。
人懐っこい虎杖の笑顔、でもその足は普段見かける事のない、窓際の人物を見た瞬間にそれ以上踏み込むことはなく。笑顔もすぐに真顔に早変わりしていた。
「失礼、しましたー」
「……悠仁ィィ!」
通路側へと引っ込む虎杖とそれを追い医務室からダッ!と走り去る男。怪我を治しに来たんだろうにそこまで逃げるか?と娘におっぱいを吸わせながらに座って落ち着かせた腰を上げ、蒼空の側へ。
転落防止の柵の側でこちらを見上げてにこにこと笑ってる。はいはい途中でぺたん、と座っていて、片手でその頭と頬をサラサラと撫でると眩しいくらいの笑顔を見せてきゃははっ!とご機嫌に笑っていた。
『もう少ししたらご飯だから待っててね。夕陽が先になっちゃうけど、妹に譲れるいいお兄ちゃんになったねー……、』
「まー…まぁまー!」
『ん、はいはい、いい子になったよ。こういうちゃんと待てるって所はやっぱ、私似なんだねー。悟に似てたら待てない!ってギャン泣きしてたかも。
……内面は彼に似なくて良かったよ~…』