第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
ドキドキしながら乾いた大きな手に私の汗ばんだ手を重ね、彼と指を絡めて手を繋いで……。進む足は何度も通った方向へ。何も言わずとも察した私は『勝つよ』と勝利を宣言してみれば斜め上からふん、と鼻で笑われた。
きっといつものように何かを賭けながら勝負をするんでしょ?割と拮抗したゲーセンでの勝率。手加減しないもん、今回も勝って勝ち越してやるかんね!トータル何勝何敗とか忘れてるけどっ!と気合いを入れて、一緒に通い慣れたゲーセンに足を運んだ。
ガー、と自動ドアが開いた瞬間から雰囲気に飲まれそうになるような大爆音のバーゲンセール。あちこちで電子音だとか録音されたクレーンの降下ボイスだとか聴こえる。
くいっ、と悟が私をリードして、少し立ち止りかけた足を進ませる。
ぬいぐるみやお菓子、フィギュアなど色んなクレーンゲームがある中で私達はどこに行く?だとか機械を見て回る事なく、進む場所は決まってる……。
決戦の場所はいつもの場所。対戦ゲームとか固められてるコーナー…!
──…ってなワケで。
『さて、何を賭ける?』
バスケとか色々あるけれどやっぱりエアホッケーで勝負しちゃうんだよねえ、と財布から百円硬貨を取り出して、一枚投入口に入れる。
向かい合い、構える中で私側からカラン、と少し軽めな物が落ちる音。前回のプレイヤーが負けた場所だったみたいです。
悟は少しだけ動きを止めて思いついたらしく、彼とは反対側に居る私に片手の指先でハートを作って微笑んでいた。
「夜、どこで過ごすかにしない?」
『えー?ドユコト?』
ホッケー台の全面から空気が吹き出すから私の長い髪が舞う。邪魔にならない様に耳に掛け、反対側でアイドリングのように上下に跳ね構えてる本気な人。サングラスを光らせてる。
「僕はラブホがいいなー。普通のホテルとかマンションに帰ってからとかだと確かに落ち着けるけどオマエが鯨になった場合片付けが非常にめんどくせえし」
『おい、ここ外!……ったく。私もそれだと悟と同意見だし賭けるメリット無しでしょ、別なもの賭けようよ』
「じゃあ体位。僕駅弁でしたいです、ハルカを持ち上げてバッコンバッコンするやつ!」
ウインクして見せた悟。
何度もしたいってせがんで持ち上げられた私がおかしくなるまで彼が突き上げたアレだと理解。筋トレになるっていうけどこれ以上ムキムキになってどうすんねん…。