第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
375.激裏
今日は子供ふたりを預け、悟と久しぶりのデート…という事で。
子供達を預ける時点で、デート仕様にお互いおめかしして悟なんか香水なんてしっかりと付けてるから、預けた相手が多分察していたと思う。こいつら俺たちに預けて第三弾の子供生産の為にヤッてくるな…的な。
そのあからさまな泳ぐ視線を見てしまい、弁解も出来ないなと諦めて肩を落としつつ。走り去る車とブレーキランプを見送ってそのままふたりきりになってしまえば、久しぶりのデートで悟の腕にそっと手を絡めれば満足げに「それじゃ、デートに行きますか!」と久々な任務の無い外へと連れ出してくれた彼。
『"デートプランは僕に任せろー!マジックテープバリバリー"ってネタっぽく言ってたけど本日はどこに連れ出してくれるんでしょうか?』
私達は私達で悟の私用車の黒のレスサスに乗ってシートベルトを締めていれば、今じゃエンストなんて動揺でもしない限りしなくなった彼はご機嫌に笑窪を作ってサングラスを光らせてる。
まぶしっ、インテリキャラの閃いた時のエフェクトじゃん。
「今のハルカに足りないものを補給する為に向かうのさ!」
『……速さ?』
私の脳内に足りないもの=速さの式が出てきたんだもん。
悟はそれを聞いて不満そうに口角を歪めてる。
「クーガーの兄貴かよ。それ、オマエの場合速さ以外も足りなくねえ?」
悟が眉を潜め、口元をご機嫌と共に歪ませていますけど。ほんわほんわと兄貴のセリフを思い出していけば私の眉間には皺が寄せられていた。
『……あ?それ悟が言えるかあ~?情熱、思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ、全てにおいて欠けてね?』
「あー!僕に対する誹謗中傷~!せっかく今日のデートでハルカが食べたい食べたい言ってたお寿司食べさせようと予約したのにー!傷付いちゃったなー!顔じゃなく心に傷を付けた男、五条すかーになっちゃったなー!デート、行かないっかなー!」
狭い車内でギャン!と悟が叫ぶ。五条悟のソロトーーーク最前列のアリーナ席での嘆きは非常に鼓膜に悪いんですけれど。マジバクオング。
…って文句を言ってる場合じゃないんだよね、お寿司って言ったし!
眉間の皺を寄せとる場合か!とエンジンを掛けて口ではそう言ってもデートに行く気しかない悟の片手を掴む、てか両手で包み込んだ。