第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
『いつも私達三人がこの子の側に居るわけじゃないんだから。守ってくれるといってもずーっとだなんて無理…、それは悟を疲れさせちゃうでしょう?悟はたったひとりなんだから家庭だけじゃない、任務もあるし未来を支える生徒だって居る。私だって、やれることはしたいんだよ…?』
……だからって、命を削ってまで術式に投資するのは、ねえだろ…。
助けが欲しい時に僕を呼んでくれればいいんだ、それでハルカの命を削らずに済んだってのに…。
悔しくてひとり握りしめる拳。もう戻らない地毛分の命のリミットは僕や子供達とおそろいの"白"
その光を受けてキラキラとした白銀の髪は彼女の生命を削り取った証。
『私ね、離れていても守れるように特別なお守りを作れる術を貰ったんだ。
お守りくらいって思ってたんだけど結構、式髪の容量を持っていかれたのは想定外だけど、さ……』
ははっ、と自嘲気味に短く笑った彼女は目を伏せる。ハルカなりに決意は持っていたけれど想定外に持っていかれたみたいだ…。
「想定外で死なれちゃ、こっちが困るんだけど…?」
『そうだね…、それはごめん。だけど悟が私や子供たちを想ってくれるように、私だって家族を守りたいって思うんだよ。少なからずも守らせてよ……』
にっこりと笑う彼女は『私にも悟みたいに家族を守らせて』と言って、僕はそんなハルカを片腕で抱きしめるだけで答えた。
ハルカのその言葉に決して"いいよ"なんて伝えられなかったんだ。