第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
──数日後、ハルカの半分以上を占めていた白髪は一部を残し一気に地毛へとリセットされていて、今までは前髪横…片側だけ白髪化が戻らない状態だったのが、今度は両サイドが白髪化していた。
……春日は女系で術式を継承していく。
だから領域に行き、末裔をお披露目する、なら分かるよ?もしそうなら僕も彼女の親に報告するのに一緒に行きたかったけれど。でも、僕が知らないうちに彼女はひとりでそれを行った。独断でそれを行った上に、勝手に取引をしてきた"事後"だった……。
「ハルカ……どうしたの、それ…」
聞くまでもない、一族の術式の譲渡を済ませたんだろ……。
僕を見上げる彼女はやけにしっかりとしてた。僕に突っ込まれる事を想定してたんだ…。
『ん……、子供達を守る為に領域内で一人と交渉して、譲渡して貰った』
「譲渡して貰ったってねえ……、それがどういう事か分かってる?」
譲渡して貰ったという事は領域内に縛り付けていたその持ち主は居なくなっている。返せない、消せない…そしてハルカの呪力容量はまた減ってしまったって事だ。
部屋の床のマットを敷いた上に座り、腕に授乳中の夕陽を抱き、太ももによじ登って僕もと欲しがってぐずる蒼空。
邪魔させちゃいけないな、と蒼空を抱き上げわんわん泣くのを泣き止ませる為に僕は息子を優しく揺すった。
「こーら、お兄ちゃんなんだから駄目でしょ。おっぱいは妹に譲りなさいよ、僕だって蒼空君と同じくおっぱい吸いたいの我慢してんだから」
『おい、そこのでっかい乳児。変な教育すんな~?』
お腹いっぱいらしい夕陽が吸うのを止めると口周りを母乳でびたびたに濡らしてて、それを拭ってやるハルカ。とんとん、と背を叩き立派に「けぷ、」と可愛らしいげっぷをした後に、捲っていた胸を簡単に手入れして片手で器用にしまう。二人目となると初めての育児に右往左往してた頃と違い慣れちゃって、近くに既に待機させてるオムツを手繰り寄せてた。
うんうん……ほんと、うんこが出るのが快速急行ラビット号なんだよねー…。