第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
確かに興味津々に夕陽に顔を向け、じっと見た後に直ぐに眠るハルカを見て手を伸ばしてる息子。
そこは妹だーって言葉無くとも態度で新しい家族を喜んでくれたって良いじゃん。
パパ、よりもママって呼ぶ回数が多い程どこまでもハルカ派なんだから!
「蒼空は五条そっくりだな、第一にハルカだ」
「はあ~……家でも嫁の争奪戦だよ…、ハイハイして速攻ハルカの元に行くし……。
あっ!聞いてよ硝子、最近は減ったけどベビーフードの後にハルカにミルクをせがんで、しょうがなく吸わせるハルカに抱っこされながら僕にドヤ顔してくんの!こんな小さいクセに僕にマウント取ってくるんだぜ!?」
「ははは…、ますますクズそっくりじゃん。ハルカも育児が大変だな、せめて息子はまともに育てるって言ってたけど」
「せめて息子は…ってどういう意味??」
僕と硝子のやり取りで騒がしいからか目を開けたハルカ。起きても元気が無さそうなのは産むのに相当な体力を使ったからか、春日家のデメリットの容姿を持って生まれた娘への想いからか。
「……おはよう、よく頑張ったね」
『さとる……、』
そうだ、と眠る新しい家族を僕はそっと持ち上げて、タオルケット越しに伝わる命の重さと温もりを改めて感じた……。
ほんと、オカアサンってのは凄いねえ…、九ヶ月とか十ヶ月とずっと身体の中で人間を作っちゃうんだから。
そしてこんなに重い状態まで育てて、あんなに狭い所から踏ん張って生命を生み出すんだ……。
身体の構造上もだけど、僕にはとてもじゃないけれど出来ない事。この小さな命を僕の愛するハルカがやってのけたんだ。産まれた子の髪の色素の遺伝で悲しませたくない。せめて…大好きなキミには笑顔で居て欲しい、幸せであると感じて欲しい。
生まれたという事実で笑って、家族が増えた喜びを感じて欲しいんだ…。
ハルカによく見えるように抱っこしてその寝顔をハルカに見せてみた。
「ほらほらっ!僕らにとっても似てる、可愛いレディーだよ~?いやあ、こんなにも生まれつき美人確定の娘が家族となると将来のパートナー厳選は大変だ、少なくとも最強である僕と肩を並べる事の出来る強い男じゃないとねー」
「そうそう見つかんねえだろ」
『……遠回しに傑さんを充てがいたいんか?』