第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
疑惑の視線を受けながらも「ちょっかいもほどほどにしろ」となんか説教を受けた後に息子をパスして貰ってさー……その背を見送りつつ、来た道をとぼとぼと戻る僕と背負われたままにはしゃぐ蒼空。
相変わらずママ大好きっ子だけど、色んな人に良くして貰えて息子は健やかに色んなものに興味を持ってる。
誰にでも笑顔を振りまいて本当に僕のそっくりさんだ!皆に好かれて、視線だって独り占め。僕に向けられる視線とはちょっとタイプが違うけどね?(僕の場合ちょっと棘のある視線なんだよねー、なんでなん?)
そっくり、といえば生まれたての娘もそう。顔はハルカにそっくりなんだけど、ハルカの白髪化と僕の髪色という要素で既に生まれた時点で髪色は白。
なるほど、確かに春日の女だと分かるくらい、身体と髪に術式回路が見える。まだそれは起動せず、一定の年齢から注意したほうが良さそうだけど……。
生まれた喜びとこれからの彼女の人生で注意すべき事を考えている時点で追い出されちゃったんだけどね。早くお疲れなハルカとはじめましてな小さなレディーに会いたいな…。
わくわくしながら廊下を走って医務室に戻ってくればふたりは静かに寝息を立てていて、産む方も生まれ出る方もお疲れモードでこうやって側で見守るしか出来ないんだよね。
……叩き起こすとか優しい僕がするわけないしさ!
「あ、あーう!まー、」
僕ばかりハルカと新しい家族を独り占めしてる事が気に食わないのか、肩…いや、頭をばしばしと叩く主張ある攻撃を受けてる。
「おー、おー…最強の僕に背後から攻撃するとは大物だねえ~…」
「妹が見たいんだろ、今日からお兄ちゃんなんだ。早く見せてやれよ」
「えー?だってまだ僕ももっと見ていたいんだもーん」
「ガキか。チッ…仕方ない、私が見せとく……」
はあ、とため息を吐いて僕の背中の蒼空を抱っこして、生まれたての小さな家族を見せる硝子。
「んー、また重くなったな~?……ほら、蒼空、オマエの妹だぞ」
「……まー、まーぁ」