第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
ハルカの居るベッドの側の椅子に腰掛けていた硝子が僕を振り向いた。
「ああ、今は眠ってるよ」
「夕陽ちゃんは?随分と静かだけど」
「ハルカの隣で寝てる、診た所特に異常は見られない…今の所ね。母子ともに今は夢の中だ」
それを聞いて、そっか!と安心して静かに部屋へと入る。ドアを締める時の音を立てないように、眠っているふたりを起こさないように僕なりに気をつけて、そっと家族の眠るベッドに静かに近付いて。
硝子の眺めるふたりを僕も隣に立ち、少し屈んで覗く。そこには地毛と白髪化が半々程の髪のハルカと、そんなママにそっくりな顔立ちの白銀の髪の生まれたての女の子、夕陽。
お腹に居た時から領域内で女の子だと言い切っていた春日家の亡き者達。産んですぐに判明したのは確かに女の子だけれど、春日の血族としては欠点であろう、既に地毛が白かったという事。ハルカのように何かしら色のある髪色が地毛であれば、将来的に"負"を吸うごとにあとどれくらい吸い取れるか?という目安が分かっただろうに、始めから白だった。
元気な産声に僕も硝子も喜んで、硝子が取り上げハルカに見せた時、彼女は絶句してた。
……死んじゃうんじゃないかって。自身が何度も危険な目に遭ってるんだ、それは敏感にもなるだろう。それで混乱してしまった。
とりあえずは僕だけ個室から追い出され、その間に彼女は眠らせて、お医者様がする事を硝子がやってくれている間に、僕は高専内に居た傑に預けていた息子を引き取りに行っていたってわけだ。
……傑に背負われた、なんか人妻を彷彿とさせるダチの姿になんとも言えない中で傑がはしゃぐ蒼空に指を掴まれながらあいつは笑ってた。「キミ以上に大人しくて面倒が見やすかったよ」って!ドユコト?傑っさーん?
「なんかオマエの言葉に引っかかるけど。妹見せに行くわ」
「お、生まれたのかい?」
「ああ、生まれた…んだけど。色々あってさ、一回追い出されてんのよ、僕……おい、傑なにさその目~?僕がやらかしたんじゃねえからな?」