第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
子供をあやし微笑む彼といつもの調子の声色に怒ってるようには思えないけれど、ご機嫌な息子と気が合う兄みたいにキャッキャとはしゃぐ父親の姿を私に見せている。
今、私が抱いてる息子を悟に抱かせようってそっと向けると、彼は大事そうに受け取ってぷっくりとしたその頬に頬擦りを始めた。
「うりうり~」とはしゃぐ悟と喜ぶ息子…楽しげな二人の笑い声が薄暗い駐車場内に響いて、小さな手によるアイマスクを下げようとしてる悪戯を受けている悟。
呪物の回収を終えた処理班が「ではお先に失礼します」とだけこちらに伝えに来て、助手席側のドアを開けてドアが締まるとすぐに発車する高専の車を私達は見送った。
『……ふー…、なんか疲れた、かも』
緊張が解かれて安心感が押し寄せて。お腹の子供を守れたという事に少し嬉しくて少し膨らんだお腹を擦る。良かった…、子供達を道具にしていたヨミの力も今は一人、いや二人。私と胎内で育まれる命を守れたという事。
隣の悟が片手を私の頭にぽすっ、と乗せてわしゃわしゃと少し乱暴に撫で回した。
「……お疲れ様」
『…ん。悟も任務お疲れ様。それから駆けつけて来てくれてありがとう』
間に合わないとかそんなんじゃない。蒼空を預かっていたおかげで最悪息子を取られる事や命の危険に晒される事を防げたという事。それから私の更なる暴走しかけない状況のストッパーにもなった。
撫で回した手を腕の中の息子を包み込むように抱き直し、にっこりと微笑む唇。
「さーて、僕も任務終わったし!用を済ませたならば高専戻るよー、お部屋でゆっくりしたいもんねー、蒼空~」
「あーぅ、きゃっきゃ…っ!」