第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
「……な、に…?なんなの、なにをしようとしてるのよっ!?貴女呪術師なら呪術は人に向けちゃいけないのよっ!?」
鎹でも母でもなく、とある人物を内に降ろして、見えるか見えないかというほどの式髪の短い破片を呪力を纏わせて飛ばす。女は「痛っ、」と僅かな痛みを感じて額をぺたぺたと触っていたけれど、それは出血するほどじゃない。
死に向かうものでも、怪我も病気でもない呪い。
もしも病院でその症状に対しての薬を処方されたとしても薬で抑えきれるものじゃない。使用者の私が離れても持続する呪術を……、きっと反転術式でも実際に取り除くか私自身がなんとかしない限りは解けない呪いを掛けてやったんだ……。
元は禪院家を呪い男を内面的に女に変えていくものを、男として変えていくものに変えたもの。その些細な呪いだった。
『とっておきの呪いを掛けちゃった。これ以上醜くなりたくなければ二度と私と悟、それから子供たちに近付くな』
「な、なに、を掛けたのよ…?」
『さあね?でも、あんた自身がきっと嫌だと感じる呪いだろうねー…』
くすり、と笑って見せ、その呪いを知る私は内容の知らない彼女を睨む。知らないという事は答えのない想像の中で大きな災厄を思い浮かべるでしょう。好きなだけ自身で最悪のパターンを考えて怯えていれば良いんじゃない?
視線の先の女は視線が泳ぎ、酷く怯え、震えながら何度も首を横に振っていた。