第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
ちら、と男女のコンビを見るも、男は手を出すなとでも言われているのか、依頼者である悟の元許嫁と私を交互に見て様子見をしてるようだし、女は呪いが私に襲いかからないのを見てか、ご希望通り苦しむ私の姿を拝むことが出来ず苛立つ表情をしていた。
呪術を使えるかどうかは悟から聞いてないけれど。
少なくとも見える、っていうのは違いない。男は多分だけど、非術師で危険な呪物を扱わせる為に利用してる可能性があった。
要するに金を積んだ、以前結婚式に現れた男みたいな使い捨てって可能性がある…。
呪物に根を張るように、そこから伸びて私に取り憑こうにも術式に遮られて触れられず、上手く行かないコトリバコの呪い。
呪物と私の術式までのその彼ら・彼女らを繋ぐものは細長く、それがへその緒なのか千切れた胴体から伸びた腸なのか判別不明……。
よく見てみればそれらは産まれてきた赤ちゃんよりももっと小さく、形がまだ歪だったり、子供にしては顔のパーツが不出来だったりしていた。
黒ずむもの、赤黒いもの……そしてドロドロと溶け出した子供の見た目の呪い。小さな手足で触れられない術式による膜に張り付いて、たどたどしい声を発してる……恨めしそうに。
"おがあさん…おがあさん……"
"どおして…"
"あ゙ー……あ゙あー…"
『……』
私はそれらを見て、言葉を聴いて自身の手をぎゅうっと握り締めた。
物理的に防ぐものがなく至近距離で腹を目掛けて飛びつこうにも上手く行かないそれらの呪いは可哀想という気持ちもあるけれど、私の中では気持ち悪いという気持ちの方がどうしても上回ってる。
自分の意思で成ったんじゃない、間引かれたり、金欲しさに……時に自分の子供を、身近な人の子供の亡骸を利用してまで呪い殺したい相手の為に小さな箱に押し込められた無念。呪殺の為に利用された小さな命達……。
春日で作られたものだろうが、他の人間が作ったものであろうがこういった呪いを発生させる呪物の作り手はまともじゃないと思う…。
──なんとしてでも壊さなきゃ。