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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの


今の私が走ってこの場から逃げた所で、封印を解いた状態ならば、この駐車場にコトリバコに封じ込められていた呪いが撒き散らされる。
都内のデバート内にはふたりをここにおびき寄せる為に歩いた中で、平日とはいえ子供をあちこちで見かけていた。子供だけじゃなく出産などが出来る若い女性も客だけじゃなく店員としてもたくさん居た。

駐車場だからっていってもその呪いの対象者がここを通らない、なんて事は言い切れない……。コトリバコに封じ込められた呪いの対象は私が逃げたって事でその無関係者である、見えず逃げられず…事態の把握が出来ない非術師達へと被害が拡散されるって事だ…。

立ち向かうとしても私自身が現在身籠った女であるから呪いの対象……そして、目の前のふたりは対象外の男と対象であるのに呪符で対処した女。

──今、解き放たれたならば真っ先に狙われるのは私だった。

私の側。バッグの中から「ヌー…」と小さな心配する声がする。
片手でそのバッグからはみ出た頭を優しく撫でた。大丈夫、ひとつ考えがあるしそれで私と子供を守るから……。

ぱり…、といくつもある呪符が男の手によって一枚ずつ捲られていく中で覚悟を決める。

悟が来るのをただ待つだけじゃ駄目。
この女は今、とっておきがあるから勝った気になってる。それで私を殺そうとしていて、呪いを受けた私を嘲笑おうとしている。
別に普通に怪我を食らったとしても式髪に受けた怪我を吸い取らせれば良いけれど、今はそれがお腹の子にどんな影響を与えるのか分からないし、可能な限り呪いを受けたくはない。

学生を辞め、現場に出ることも妊娠中に悟に鍛錬してもらう事も、今だって仕事ばっかりでご無沙汰だから体術にブランクあるんだけど。やらないよりはマシか、といつ来ても良いように構えた。
女はあはは!とそんな私を笑ってる。
無駄な抵抗って思ってんでしょ……その隣の男はついに最後の砦となる一枚を爪の先でカリカリと端の方から強引にべりっ、と音を立てて呪符を剥がした。

"オ、オオオオオ…ォォ"

いくつもの嘆きが合わさった声は吹き荒ぶ風よりも禍々しく唸り、箱から漏れ出す帳のような呪い、それらは地獄の光景って言葉が良く似合う……。
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