第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
その言葉を聞いて、思わず首を傾げちゃった。
──なんだこの女……、話が通じないというよりも思考が宇宙にトんでるんですけど。
言いたいことはなんとなく分かるよ?きっと何度も子供が流れてしまって授かりにくくなってしまった、もしくはもう子供自体を孕めない身体となってしまった、目の前に立つ思考回路がぐちゃぐちゃになってる人。
そういった自身に起こった事がよほどショックで受け入れられないのか。彼女が許嫁の立場を降ろされた中で、その本来一緒になるべき相手が選んだ人は急に現れた私。
普通に恋愛をし結婚や出産をした、自身がなれなかったポジション。自由恋愛が出来た存在が出来たというのは彼女が気に入らないのも多少は理解は出来る、でも……。
天と地の差の出てしまった状況で産むことが困難な中、悟にとても良く似た子供を産んだ私から取り上げようとしてるんだ…それは理解できない。
『……はぁー、』
大きなため息が出た。くだらない、すっげえくっだんねー……。
人の幸せをぶん盗ってそれを幸せって言いたいの?おかしいでしょ、そんなのさ?
『多少、同情はするけど息子も悟もあんたなんかにあげるワケないじゃん。それにあんたはただこんな話をする為だけに殺意を持って私に近付いたんじゃない…』
キッ、と二人を警戒して睨む。黙ってる男は悟の元許嫁の指示を待ってるような気がする。自己判断での行動もあるだろうから気は緩めないようにしないとね…。
いつだって"罰祟り"を打ち込めるようにしよう、触れてしまえばこっちのもの。腕も足も、首も…心臓だって私には呪いだけじゃない、人に大しての対策はあるんだから。
女から笑顔が消えていく。真顔からの蔑む表情は少し痩せた顔がより狂って見えた。
「だから何度も言ってるじゃない、私は悟さんの許嫁なのよ?」
『フられてんだろ』
「口の悪い女ね、悟さんはそういう人が嫌いなの。もう少し上品になられてはいかが?
そもそも貴女はただの悟さんのお遊びの相手よ?あの人は少し元気だから今まで黙っていたけれど、整った容姿と家柄もあるから貴女みたいなコバエが良く集まるの。
貴女が最近、調子に乗ってるようだから直に私が教えてあげるわね?私の代わりに跡継ぎを産ませただけなの。悟さんは心底、私に愛を向けてるんだから……ふふっ、ちょっと愛してる、なんて囁かれて抱かれたくらいで本気になって…可哀想」