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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの


近付く足音が止まった中でくるりと後ろを振り返ると、人混みもなくよく見えるストーカーの全貌。
よく見ればあの時よりも更に痩せたというかやつれてしまった悟の元許嫁の幼馴染みである女と、隣にはスーツではない、私服で黒尽くめの男の二人。
男は今回初めて見る、中肉中背で黒いキャップに肩ほどの茶色の髪。外見で判断するならば一言、"チャラい"……と言えば良いのかな。

二人の関係は一緒に居るだけ、というか荷物持ちというか。男女の関係を見抜くほどじゃない私だけど、その私から見ても少なくとも恋人みたいな深い関係ではないのは見て分かる。

女は私の言葉を聞いた後に不気味に笑みを浮かべていた。

「……今日は貴女とお話がしたくて来たのよ」

『話?話をしにきた、にしてはその隠しきれない殺気をどうにかしなよ。話ってワケじゃないんでしょ……嘘くさいなあ~…』

この女は嘘ばっかりだ。悟の子供を授かった、と嘘をついた事実もあったから私にはこの人が信用ならなかった。
一瞬真顔になった後に再びにっこりと不気味に笑う女。数歩、こちらに近付き私がこれ以上近づかないで欲しいから片手を突き出してみればその場で進む足は素直に止められた。
元許嫁と私との距離はおおよそニメートルくらい。チャラい男が荷物を抱えたまま女の隣まで進んで止まる。視線を私と女を行き来してるから様子見、という状態か…。

それから男はしきりに両手に持つもの……青と白の風呂敷に包み込まれた四角いなにかを気にしては隣の女を見てる頻度が多い。この距離まで近付かれると嫌な予感は男でも女でもなく、男の持つ"なにか"からだって感じ取れる。

女はあまり日常が満たされていないような不健康そうな顔色で口角を上げた。

「まずは貴女にお礼を。子供を産めない私の代わりに悟さんと私の子供を産んでくれてありがとう」

『はあ?……あんた、頭沸いてんの?蒼空は私と悟の子供なんだけど?』

女の言葉に悪意が込められてるのは嫌でも分かるよ……。拳をぎゅっと握って女を特に警戒しとこう…。

「そうね、悟さんの血を継いでるから悟さんにとてもそっくりよねえ……、あの子。
少ししくじりの血が流れてるから異物感はあるけど、悟さんの多くの血を引き継いでる。あれは私が産むべきだった子、本来私のお腹に居た子なのよ。
だから貴女の子供じゃないわ、私にあの子を返して頂戴?」
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