第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
371.
どんよりとした空と少し湿っぽい外気。確かに今日の予報は一日曇りだと言っていたけれど……。
特に用事も無いけれどなんだかそわそわしながら悟を送り届け終わって、私は街中の駐車場でひとり、運転席から降りてロックをした。
悟は任務中で終わるまで自由にしてなと言ってくれた。ただし、サトールは必須って最低限のルールを付けて。それくらい余裕だから良いけどさ…、普段よりも警戒はするしね?
悟との行為を再開して僅か、すぐに第二子が宿って少し大きくなったお腹をひと撫でし、人通りの多い街中へと繰り出した。
基本的に車での移動なら大丈夫だろうとの事で彼が任務中に時間が掛かりそうな時は近場で待つことが多いのだけれど。彼からの任務が終わったという連絡を待つ今、息抜きとはいえ今日はカフェに入るとかそんな気分でもないし買い物をしようかな、と今は思ってるんだよね…。
ゆっくりと歩きながら頭の中で部屋で足りないものを思い出す。
……そういえば保湿剤がそろそろ買い足さないといけないんだっけ?って事で今回の目的は保湿剤を買いに大きなスーパーかドラッグストアが目的地かな。ついでにその辺の店舗を見ていこうと一人(バッグにはみ出る形でサトールも連れている)周囲に警戒したまま私は歩いていた。
──街歩きをする際には決して気を抜くな。
そう悟に良く聞かされていた。普段からそうだけれど特に一人の時は常に任務中だと思え、と息抜きも気を抜きすぎない程度に周囲に視線を常に動かしながら移動してる。
……なんだか今日は特に何かがありそうな、嫌な予感がするんだよ、勘っていうかなんというか…。
歩いているといつからか、刺すような視線を感じた。車に乗ってる時は感じなかった、降りてしばらくした頃だったかな。
周辺地域で呪いが発生しやすいって事もあって、この街は良く悟からの連絡待ちの間によく立ち寄るんだけどいつもはこんな視線は感じない。
なんというか……リベルタみたいにいつ連れ去るかを影から見ているのだとしたら少し違う。これは殺気って言えば良いのかな、誰かさんのように人から恨みを買うことはしていないから、私に向けられる事はないと思ったんだけどゾクリとする気配。
それからもうひとつ、呪力を感じる…。視線と呪力という気持ち悪くなるような私へ向けられた敵意に視線を動かしながらいつ来るか分からない緊張の為に固唾を呑む。