第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
370.激裏
悟に回された祓いの任務を全て終わらせて、現在追加の任務(残業)も無くその帰りの車の中で。
朝に子供を預け、そこから彼を車で運んで……。
私には治療を主とした仕事があるし、ずっと悟を現場に送るというわけじゃないけれど伊地知や新田も居るから、この呪術界の一つの歯車になれていれば良いけれど……なんて、ちょっと新しい仕事に少し慣れた所で助手席に乗っていた悟は、そこは左、三つ目の信号右と車の行き先をナビをしていく。
与えられた仕事は終わってんだ、残業するわけじゃない。自ら追加の任務無いの?なんて要求するボランティア精神を私も悟も持ってるわけでもないしさ?
買い物だとか高専に帰るんじゃなくて今から向かうのは宣言していた通り"寄り道"って事。悟はこれから休憩をする為に助手席で車の行き先をナビしてるんだ。
仕事で疲れたからの休憩じゃなくて寄り道で疲れる為の休憩、なんだけどね!
「ほら、目的地が見えてきたよ!」
『ん、案内ありがと』
何度か看板を見た事のあるホテルの名前。その敷地内に車を入れる。
ゆっくりとホテルを周り、いくつか部屋が空いてるのを見て……そこに表示されてる部屋についての情報を見て「この部屋が良いんじゃないの?」なんて良い部屋を見つけてその部屋専用の駐車場に車庫入れをする。
車が見えないように厚手のビニールカーテンが高専の車を完全に隠した後に言葉を交わさず、静かに細い階段を登っていく……。
先に悟が進み、私がその逆立てた白銀をふさふさと揺らすその背後から着いていってさ……まだ職務中ってか、久しぶりっていうか。期待をしてドキドキと心臓が高鳴っていく。
『ちょっと早い時間じゃない?すっげえ罪悪感~……』
片手で胸を抑えてその罪悪感とは違う意味で高鳴っているのを自覚してる。
私を振り返った悟は一度立ち止まった。
「なあに、職種毎に休息の時間があるだろ?死と隣り合わせな呪術師にはそれなりの休憩時間は必要じゃん。
一般的にお昼に一時間、その他休憩ある場合、三十分から一時間。自分で時間配分をする所もあるだろうし、もっと時間をくれる所とかさ?ホワイトならばもっとイージーに心身共に休まるだろうけど」
『だからってこれは休憩って名前の淫行だろ~…』
「ん、そうだね!そこは僕もしっかり理解してるから開き直って淫らな事しよっか!」