第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
「まあ~、すぐに泣き止んで……随分とママっ子なんですねえ…」
よしよし、と揺すられご機嫌モードが続いてて。大人四人に和やかな空気が流れて……。
「ん、そうそうマンモーニなのよ、うちの子。僕でも時間掛けて泣き止ますんだけど今回もトドメは奥さんだったでしょー?可愛い子には旅をさせよ、ここは耐えてくれなきゃ蒼空君の弟や妹も仕込めないっていうね~!
……痛ってー、背後から攻撃とかキミ卑怯なりよ?」
『仕込み言うな、パン作りじゃないんだけど?』
あれか?うちの子は小麦粉やイースト菌で出来てるってかぁ?
とんでも発言の彼の手刀を当てると頭を擦り、への字口で黙る。見ろ、二人そろって視線を会わせあった後にそういうコトォ?ってちぃかわみたいな瞳で目が泳いでんじゃねえか。
あやすために下げたアイマスクを悟自身で上げた後、にこ、と笑い、今は泣き止んだ我が子を向きつつふたりを交互に見てる。
「三日くらいうちの子を預かって貰うよ。夜泣きするから頑張って!」
ぽん、と男性の肩に手を乗せ、女性にはサムズアップをした後蒼空に見えるように両手を顔の横でぱたぱたと振る悟。それはアイマスクを取ってる時にやって欲しかったゾ……。
私も覗くのを止めて一歩下がると、また泣くかと思った息子は泣かずじっと私よりも手を動かしてる悟を見て手をバタつかせていた。手のひらとか指に目が行ってるのかぁ…興味はそっちにあるってか!
ふたりが車に乗り込んでその車体が遠くに去っていく姿を見届ける。前回から一ヶ月も経過してない。定期的にというよりも不定期に、多分悟の気分で預けていると感じて。
「ふふ、今回はこの状態の僕でも笑顔になったね~!子供に好かれるのも溢れ出すGLGの運命なんだろうね……?」
『まーたデスティニーって言って~……手の動きが面白かったからでしょ』
高専があるんだからただでさえ人が少ない地域。高専門前で吹いた風に冷えそうで自身をぎゅっと抱きしめると、その私の肩を悟側へと抱き寄せられてくっつく。じわ…っと悟の体温が移ってきてあったかい。
隣の悟を見上げたら優しい口元でにこ、と笑っていた。