第38章 芽吹くもの、芽吹かぬもの
「ふぇっ……、ふぇぇ…っ」
『……あっ』
手足をバタつかせてエンジンが掛かり始めそうな咽せ方。あらま、これは泣くわ。
男二人で大体何時くらいに夜泣きしますか?などと話し合っていたのもエンジンの掛かる赤ちゃんの泣き声で止まる。そうなったらいくら揺すって落ち着かせようとしても止まることなく、晴れ模様な笑顔は大洪水の表情へ。本調子で大きな声で泣き始めた。
「わぁああんっ!」
「あーらら、泣いちゃった!小さくてもこういうのは敏感なのかねえ~?」
一歩こちらへと寄って上半身を下げ、両手をポケットに突っ込んた、アイマスクのまま覗き込む彼に更に涙を流して大声で泣いてる。だからアイマスクが原因だっての!と彼の布を指先で引っ張って下げて、立てた髪がふぁさ…、と下がった。
何事も無かったようにそのままの流れで彼がいないいないばあ!と息子を泣き止ませようとあやし始める悟。二度、三度と繰り返せば少しずつだけど収まってきた、ような。
「あー、あぅ、えぐっ……あーっ!……あぅ、きゃははっ!」
『おー…流石祓ったれ本舗、乳児のハート鷲掴みじゃん。とりあえず泣き止んだのでグッド!』
「えっ僕、なんもボケてないんだけど??」
うん…泣き顔もだんだんと笑顔に変わってきた。ぐずりは無くなっていつものご機嫌フェイスになったけどさあ、あまり人に慣れないのかなあ……。
女性の腕の中、揺すられながらも笑顔の目尻に涙がキラキラしてる蒼空の顔を覗き込めば泣き声もゆるりと収まり、霞んだ空みたいな青く潤んだ瞳でこちらを見つめてる。それどころか手を伸ばして私の額をぺちぺちと叩いてきた。
顔を見て安心したのか、叩いた事に意味があるのか。
「きゃっ、きゃははっあはっ」
『お、ご機嫌になったねー…』
はい、これで安心コースの笑い声付きになりましたね!と胸を撫で下ろしていると抱っこしてる女性が揺すりながら、息子の顔を覗き込んで笑いかけている。