第37章 繋ぐいのち、五条と春日の鎹
『いい話でシメたいから悪いニュースからで』
「了解、悪いニュースからか。オマエが医務室に来たのは良いんだけどさ、硝子の休みが潰れたよ」
『えっ?今日の時点で?』
「うん、そう。久しぶりの連休だってのに初日から全部潰されたってキレてたから、下手に連絡はしない方が良いからな?」
息子をあやしながら私に警告をしてくる悟。そりゃあ、誰だって休みを潰されたら機嫌は悪いもの…、よほどの事では無い限りは連絡はしない方が良いと見たね……。
ひとつ私は悟に頷いて。
『うん……、機嫌悪い時の硝子さん知ってるもん、今は放っておくのが一番だって知ってる~…けど、いくらなんでも今回のは可哀想だなあ……』
せっかくの休みなのにね?と指を小さく暖かな手で握られながらその理由を聞く前にお喋りな口が動くのを見た。僅かに微笑む彼の唇。
「京都側で友好的な呪物の受肉体がね、やられちゃったみたいでさ……なかなか無いタイプだったんだけどせっかくだからその死体の解剖に行くみたい」
『やられたって。呪霊?呪詛師?それとも呪術師?』
「んー…まあ、今はなんとも。肉体改造っていうのかな、元々の形状を大きく歪められてね。目撃者も居ないし術式でやられたっていうのは分かるんだけどさあ……。残穢から歩行の形跡は人間だし、低級の呪いっていうものじゃあない。危険なのは変わらないんだけど、その受肉体の亡骸を調べる為に硝子は京都に出張って事なんだ。
ついでに滞在中はあっちでの治療もやるから休みは丸潰れ~……って感じです」
解剖・解析が終わらないと帰ってこないよー、と悟が軽い調子で言った後に、そっと私が悟に見えるように手を挙げる。
『じゃあ、それはいつ終わるかとか分からないって事?』
「そういう事!……で、良いニュースの話。聞きたいでしょ?聞く?聞くよね?聞きたいんだよね?」
首をぴょこぴょことアヒルの様に上下させてる彼。その動き、少しばかり腹が立ちます。蒼空が喜びそうなコミカルさだけど。
調子に乗っているから止めようと、頬と言うか、顎に片手を添えるとぴた、と止まる悟の奇妙な動き。