第5章 "好き"が止まらない!
もぐもぐと食べている悟は甘いものが好きだからか本当に美味しそうに食べている。別腹ってそういう意味じゃないんだけれどなぁ、と思いはしたけれどこれ以上は突っ込まないでおこう。
恋人になったらこういう部屋での距離感が大きく変わるものかなと思ったけれど、ちょっとだけ近付いた感じで居心地が良いまま。
あの足踏みしてたような自分の気持ちを出せなかった日々は早く抜け出せていればもっと今頃には仲良くなれていたのかもしれないなぁ。
ポテトに刺したままのフォークをようやく口に運ぶ。
煮物の時といい、カツレツの時とか、中華丼の時とかホットケーキの時とか、悟は料理の腕が良いみたいだ。凄く美味しい。これはチューハイじゃない、ジャーマンポテトに失礼だ。ビール…ビールは切らせていたっけ?ビールの似合う味。
……こうも美味しい物が作れるなんて。天は二物も三物も与えすぎで嫉妬したくなる。
今日行ったバーの料理も美味しかったけれど、それよりもこっちの方が断然美味しかったので思わず笑みが溢れてしまった。
人は美味しいと笑っちゃうっていう、誰かの言葉を思い出した。
『……んふーっ、何これ!?めっちゃ美味しいんだけど?』
チューハイをぐびりと飲み、またフォークで、チョリソーとポテトに刺す。良い塩気がつまみ適正力が高い。
それを口に運んでいると悟はへっへっへ、と怪しい笑い声を上げていた。
ちょっとその奇行ってか奇声に引きながらも、フォークをポテトにまた突き刺す。美味しくてやめられない止まらない。
「そんなに喜んでくれるならさ…これからは僕達、毎日ご飯一緒に食べる事にする?」
かなり自信満々の顔だ。
というかこれまでも時々ではあるけれど食事をしたりしてきた。別れた時は気まずかった、反転術式が出来た時から元通りになってたけど。
今更だけれど個室の寮でありながらなんでルームメイトみたいな事…いや、恋人となった今じゃ同棲だな。同棲なんでしてんだよと思う。元々ここに居る教師がなんでわざわざ編入すると決まっていない居候時代から隣に住み、開通してんだよ……。
突っ込むべき事はまだまだあるけれどさ。合鍵とか(壁を貫通してる時点でもはや意味ないけれど)
ちらっ、と悟を見ながらまたポテトにフォークを刺す。