第5章 "好き"が止まらない!
37.
ぷしゅ、カンッ!と起こしたプルタブを定位置に戻して、氷結を開ける。あーこのレモンの爽やかな香り、コレよコレ。
──コンビニに寄って寮へと戻った私と悟。
悟は悟の部屋玄関から部屋に一旦戻っていき、私は自室で部屋着に着替え終えてプチ酒盛りの準備をしている所だった。
着替えている時の事を缶チューハイを待てしながら思い出す。
自分の部屋で使ってる柔軟剤の仄かな香りに少し悟の香水の香りが着いていて、脱いだ時にその香りを鼻をつけて嗅げば少しだけ嬉しくて口元を緩めてしまった。ぎゅって…してたなぁ。バーで結構飲んでも酔いが覚めたと思ったけれどまだ酔ってるるのかも…へへ。
……良かった、悟部屋に行ってて。下着姿でにやにやしてたら不審者だもん。
悟を待つ間、小さめな座卓にコンビニの袋を置いている。場所を随分取るな、と邪魔なので袋の手提げを持ってガサ、と床に移動させた。向かい合って使うとしても十分でしょう。
隣の部屋側から物音がする。
かた、と小さな音を立ててから壁が持ち上がる音。悟も部屋着に着替えて来たのか、片手に何か皿を持ってる。
持ち方がウェイターのアレだ、確か私も昔学校祭であの持ち方やったわ。全員メイド服という地獄絵図が印象強すぎて忘れかけていたけれど。
ご機嫌なウェイターは片手で壁のスライドを大きな音を立てないように気遣って閉じると酔っ払ったテンションで空いた手を上げた。
「大将!やってるー?」
『へい、ラッシャイ!』
素足でひたひたとやって来た悟は私の居る小さな座卓に皿をカタン、と置く。チーズや胡椒の良い香りが漂っている。ジャーマンポテトで調理したての様だ。
『これは…?』
「キミを迎えに行く前に食べててね、こんな時間だし僕、今食べたらもたれちゃうし。全部食べたって良いよー、あっ皿は食べちゃ駄目ね!」
『流石に皿は食べないわ。ではお言葉に甘えて…いただきます!』
がさがさと袋からロールケーキを取り出して、パッケージを開けている悟。
言ってる事とやってる事が反対だ、これ。ちょっと呆れた視線を送りながらフォークが一本皿に乗っていたので、それを取った。
ぷす、と丁度良い大きさのポテトに突き刺してその髪のような真っ白いクリームたっぷりのロールケーキを無邪気に食べている悟につっこむ。
『スイーツは別なのかよ……』
「うん、別腹って言うじゃん?」